東京都教育委員会は、2026年度(令和8年度)都立高校入試における「文化・スポーツ等特別推薦」の実施内容を発表しました。この記事では、その中からサッカー(男子)の推薦実施校・募集人数・前年度倍率などのデータを一覧で紹介します。都立高校のサッカー推薦にはどのような特徴があり、どの学校で競争が激しいのか――データと傾向をもとに詳しく解説します。
<参考リンク>令和8年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について
都立高校のサッカー推薦はどんな入試?
都立高校で実施される「文化・スポーツ等特別推薦」は、特定の分野で優れた力を持つ生徒を評価する制度です。サッカーでは、競技実績やスキルだけでなく、チームプレーや精神面の成熟度も重視されます。
各高校は独自の選抜基準を設け、推薦枠内で合格者を決定します。そのため、たとえ推薦対象者が募集人数に満たなくても、基準を満たさない場合は不合格となることがあります。この点が、学力や調査書を中心に評価する「一般推薦」との大きな違いです。
なお、「文化・スポーツ等特別推薦」と「一般推薦」は併願可能で、どちらにも出願する場合は両方の検査を受けます。応募資格は「在学している中学校長の推薦を受けた者」で、これは一般推薦と同様です。
仮に特別推薦で不合格となっても、同じ高校を一般入試(学力検査)で再度受験することが可能です。ただし、推薦での出願実績が有利になることはありません。
サッカー(男子)|文化・スポーツ等特別推薦実施概要(2026年度)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施校数 | 33校 |
| 募集人数 | 110人(前年+9人) |
| 願書受付期間 | 2026年1月9日(金)~16日(金) |
| 実技検査日 | 2026年1月26日(月)・27日(火) |
| 合格発表日 | 2026年2月2日(月) |
| (参考)2025年度募集人数 | 31校・101人 |
| (参考)2025年度応募人数 | 308人 |
| (参考)2025年度応募倍率 | 3.05倍 |
2026年度は、実施校33校・募集人数110人と、前年より9人分の枠が拡大しました。多摩地域・23区の両方で実施されており、普通科・総合学科・工科系を問わず、幅広い学校でサッカー推薦が設定されています。「サッカーを軸に都立を選びたい」受験生にとっては、より多くの選択肢が生まれた年度といえます。
一方で、実際の競争状況は高校によって大きく異なります。この記事では、全33校の一覧データに加え、前年の応募倍率が高かった高校・低かった高校・地域別の傾向を順に整理していきます。
サッカー推薦実施校・募集一覧(2026年度)
2026年度は、前年より9人増の110人募集・33校で実施されます。例年通り、多摩地域・23区の両方で幅広い学校が対象です。
※以下の倍率は2025年度実績(参考)です。
・応募倍率=応募人数 ÷ 募集人数
・合格倍率=応募人数 ÷ 合格人数(全員合格の場合は1.00倍)
| No | 高校名 | 市区町村 | 2026年度 | (参考)2025年度 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 募集人数 | 前年比 | 応募人数 | 応募倍率 | 合格倍率 | |||
| 1 | 東久留米総合高校 | 東久留米市 | 10人 | +5人 | 43人 | 8.60倍 | 8.60倍 |
| 2 | 南葛飾高校 | 葛飾区 | 5人 | – | 31人 | 6.20倍 | 6.20倍 |
| 3 | 葛飾野高校 | 葛飾区 | 5人 | – | 9人 | 1.80倍 | 1.80倍 |
| 4 | 府中東高校 | 府中市 | 4人 | – | 14人 | 3.50倍 | 3.50倍 |
| 5 | 保谷高校 | 西東京市 | 4人 | – | 14人 | 3.50倍 | 3.50倍 |
| 6 | 鷺宮高校 | 中野区 | 4人 | – | 13人 | 3.25倍 | 3.25倍 |
| 7 | 福生高校 | 福生市 | 4人 | – | 12人 | 3.00倍 | 3.00倍 |
| 8 | 片倉高校(普通科) | 八王子市 | 4人 | – | 10人 | 2.50倍 | 2.50倍 |
| 9 | 深川高校(普通科) | 江東区 | 4人 | – | 9人 | 2.25倍 | 2.25倍 |
| 10 | 石神井高校 | 練馬区 | 4人 | – | 9人 | 2.25倍 | 2.25倍 |
| 11 | 富士森高校 | 八王子市 | 4人 | – | 9人 | 2.25倍 | 2.25倍 |
| 12 | 東大和南高校 | 東大和市 | 4人 | – | 8人 | 2.00倍 | 2.00倍 |
| 13 | 武蔵村山高校 | 武蔵村山市 | 4人 | – | 8人 | 2.00倍 | 2.00倍 |
| 14 | 東高校 | 江東区 | 3人 | – | 12人 | 4.00倍 | 4.00倍 |
| 15 | 城東高校 | 江東区 | 3人 | – | 11人 | 3.67倍 | 3.67倍 |
| 16 | 狛江高校 | 狛江市 | 3人 | – | 10人 | 3.33倍 | 3.33倍 |
| 17 | 豊島高校 | 豊島区 | 3人 | – | 8人 | 2.67倍 | 2.67倍 |
| 18 | 高島高校 | 板橋区 | 3人 | – | 7人 | 2.33倍 | 2.33倍 |
| 19 | 足立高校 | 足立区 | 3人 | – | 6人 | 2.00倍 | 2.00倍 |
| 20 | 武蔵丘高校 | 中野区 | 3人 | – | 5人 | 1.67倍 | 1.67倍 |
| 21 | 墨田川高校 | 墨田区 | 3人 | – | 3人 | 1.00倍 | 1.50倍 |
| 22 | 光丘高校 | 練馬区 | 3人 | – | 3人 | 1.00倍 | 1.00倍 |
| 23 | 東大和高校 | 東大和市 | 2人 | – | 16人 | 8.00倍 | 8.00倍 |
| 24 | 紅葉川高校 | 江戸川区 | 2人 | – | 6人 | 3.00倍 | 3.00倍 |
| 25 | 豊多摩高校 | 杉並区 | 2人 | – | 6人 | 3.00倍 | 3.00倍 |
| 26 | 小平南高校 | 小平市 | 2人 | – | 6人 | 3.00倍 | 3.00倍 |
| 27 | 八王子北高校 | 八王子市 | 2人 | – | 6人 | 3.00倍 | 3.00倍 |
| 28 | 美原高校 | 大田区 | 2人 | −2人 | 6人 | 1.50倍 | 3.00倍 |
| 29 | 府中西高校 | 府中市 | 2人 | – | 4人 | 2.00倍 | 2.00倍 |
| 30 | 松が谷高校(普通科) | 八王子市 | 2人 | – | 4人 | 2.00倍 | 2.00倍 |
| 31 | 淵江高校 | 足立区 | 2人 | +2人 | − | − | − |
| 32 | 小平西高校 | 小平市 | 2人 | +2人 | − | − | − |
| 33 | 墨田工科高校 | 江東区 | 2人 | +2人 | − | − | − |
| 34 | 深川高校(外国語コース) | 江東区 | 1人 | – | 0人 | 0.00倍 | − |
募集人数を見ると、4〜5人前後を設定する高校がボリュームゾーンで、3人募集がそれに続きます。一方で、応募倍率は高校によって大きな差があり、前年度5倍を超える狭き門の学校もあれば、応募者がゼロだった学校も存在します。
「応募倍率」は、志願者が何人集まったかを示す指標で、数字が高いほど推薦合格が難しくなります。一方、「合格倍率」は、応募者のうち何人に1人が合格したかを示すもので、全員合格の場合は1.00倍として算出されています。
サッカー推薦で合格を狙う場合は、倍率の高低だけでなく、チームの練習環境・指導体制・通学距離・進学実績など、複数の観点から志望校を検討することが大切です。
昨年度(2025年度)応募倍率が高かった主な高校
| 高校名 | 所在地 | 募集人数 | 応募人数 | 応募倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 東久留米総合高校 | 東久留米市 | 5人 | 43人 | 8.60倍 |
| 東大和高校 | 東大和市 | 2人 | 16人 | 8.00倍 |
| 南葛飾高校 | 葛飾区 | 5人 | 31人 | 6.20倍 |
| 東高校 | 江東区 | 3人 | 12人 | 4.00倍 |
| 城東高校 | 江東区 | 3人 | 11人 | 3.67倍 |
| 府中東高校 | 府中市 | 4人 | 14人 | 3.50倍 |
| 保谷高校 | 西東京市 | 4人 | 14人 | 3.50倍 |
| 狛江高校 | 狛江市 | 3人 | 10人 | 3.33倍 |
| 鷺宮高校 | 中野区 | 4人 | 13人 | 3.25倍 |
上位は、いずれも都立高校サッカー部の「強豪校」ゾーンに入る高校です。特に東久留米総合・東大和・南葛飾・保谷・城東などは、都立勢の中でもクラブユースチームや私立強豪校と鎬を削るTリーグに所属しており、都立トップクラスの実力校。推薦枠が少ないうえに実技検査も競争が激しく、毎年5〜8倍前後の倍率になります。
別記事でまとめている👉 都立高校サッカー強豪ランキングTOP10で紹介している、東久留米総合・石神井・国分寺・東大和南・東大和・狛江・駒場・日野台・葛飾野・保谷のうち、複数校がこの推薦枠にも登場しています。
昨年度(2025年度)倍率が低かった主な高校
これらは「定員に近い応募」または「応募なし」の学校です。競技実績よりも「サッカーを続けられる都立に行きたい」という志向の受験生が多く、実技検査よりも学校全体の雰囲気重視で選ばれる傾向があります。
【地域別】都立高校サッカー推薦の傾向
| 地域 | 主な高校 | 特徴 |
|---|---|---|
| 23区東部 | 城東・東・南葛飾・葛飾野など | 高倍率傾向。実技選抜中心で、地域のクラブチーム出身者が多く集まる。 |
| 23区西部 | 石神井・豊多摩・保谷・鷺宮など | 中堅〜上位層が多く、学力・部活の両立志向。倍率は2〜3倍台で安定。 |
| 多摩地域 | 東久留米総合・東大和・片倉・府中東・八王子北など | 強豪校が集中。推薦倍率3〜8倍と非常に競争が激しいエリア。 |
- 23区東部エリア(葛飾・江東・江戸川など)
南葛飾・葛飾野・墨田川・紅葉川といった学校が集まる地域。クラブチーム出身の受験生も多く、実技検査のレベルが高い傾向にあります。特に南葛飾や葛飾野は毎年高倍率で、「即戦力として試合に出られるか」が合否を左右します。
地域密着型のチームカラーが強く、通学圏内の選手を中心に志願が集中しています。 - 多摩地域(八王子・府中・小平など)
東久留米総合・片倉・富士森・八王子北・府中東など、都立サッカーの“実力校”が集中する地域です。特に東久留米総合は8倍超という圧倒的な競争率で、都立トップレベルの実技・戦術理解が求められます。「この地域で強豪都立に入りたい」というニーズが高く、クラブ出身者・スクール出身者の併願も多く見られます。 - 23区西部(中野・豊島・板橋など)
豊島・鷺宮・高島・武蔵丘など、学力と部活動を両立させたい受験生が集まるゾーンです。倍率は2〜3倍台で比較的安定しており、「文武両道」を掲げる学校も多いのが特徴です。技術・判断力に加えて、チームでの連携プレーや主体性も重要です。
都立高校サッカー推薦の実技検査と選抜基準(2026年度)
1.主な実技検査内容の傾向
サッカーの文化・スポーツ等特別推薦では、実技検査の比重が高く、ほぼすべての学校でプレー内容が合否を左右します。検査内容は学校によって異なりますが、東京都教育委員会が公開する資料をもとに整理すると、以下のような傾向があります。
- 基礎技術の確認:パス・ドリブル・トラップ・シュート・ヘディングなどの基本スキルを丁寧に評価。
- 判断力・実戦力の確認:ミニゲーム(3対3〜5対5)や1対1での判断力、ポジショニング、連携プレーを重視。
- スピード・持久力の確認:50m走や1500m走、シャトルランなどを取り入れ、運動能力を総合的に測定。
- ゴールキーパーの独自検査:キャッチング・セービング・ロングキックなど、専門技能を個別に評価するケースが多い。
こうした検査は、単なる技術力の比較ではなく、「試合で通用する力」や「チームに貢献できる姿勢」を重視する傾向が強まっています。
2.選抜基準のタイプ別傾向
各校の選抜基準には共通点も多いものの、求める人物像には明確な違いがあります。公開されている基準例をもとにすると、都立サッカー推薦は大きく3つのタイプに分けられます。
① 実績重視型(競技力最優先)
都大会上位やクラブチームでの活躍実績を持つ選手を高く評価。競技力を中心に判断するため、即戦力としてチームを引き上げられるプレーヤーが求められます。
主な基準例:
- 「サッカーの能力に優れ、東京都大会上位レベルの実力のある者」
- 「運動能力に優れ、都大会レベルの実力を有する者」
- 「中学時代にクラブチームでレギュラーとして活躍した者」
このタイプは、東久留米総合・東大和・石神井・南葛飾などの強豪校に多く見られます。
② バランス型(技術+人間性の両立)
サッカーの技能に加えて、学業・生活態度・リーダー性を重視するタイプ。競技面で突出していなくても、「継続性」や「向上心」が評価されやすい傾向です。
主な基準例:
- 「学業と部活動を両立し、学校生活全般でリーダーとして力を発揮できる者」
- 「サッカーの技術・能力に優れ、意欲・向上心を有する者」
- 「本校の部活動に3年間継続して参加し、学業との両立ができる者」
多くの中堅〜上位校(例:保谷・片倉・府中東など)がこのタイプに該当します。
③ 人間性重視型(文武両道・リーダーシップ重視)
競技実績よりも、人間性・生活態度・学校全体での貢献を重視。
学力上位層や地域密着型の学校に多く、推薦後の学校生活を重視する傾向があります。
主な基準例:
- 「チームの模範となり、文武両道を実践できる者」
- 「学校生活全般においてリーダーシップを発揮できる者」
- 「学業と部活動を両立し、学校行事等でも主体性を発揮できる者」
このタイプでは、「人としての成長」を重視するため、態度やマナーも合否に影響します。
3.事前準備のポイント
サッカー推薦では「当日のパフォーマンス+日頃の姿勢」の両面が問われます。以下の3点を意識した準備が効果的です。
- 学校説明会で検査内容を確認する
実技項目や採点の重点は学校によって異なります。必ず教育委員会のPDFや説明会で最新情報を入手。 - 部活動見学で雰囲気を把握する
普段の練習環境・顧問の指導方針・チーム文化など、自分が続けやすい環境かを見極める。 - 自分のタイプと学校の選抜方針を照合する
「実績で勝負する」「文武両道で勝負する」など、自分の強みが学校の評価軸と一致しているか確認する。
2026年度の都立高校サッカー推薦の見通し
2026年度の都立高校サッカー推薦は、33校・110人募集(前年+9人)と過去最多クラス。ただし、前年の平均応募倍率3.05倍が示すように、人気校への集中傾向はさらに進んでいます。
- 東久留米総合・東大和・南葛飾など:強豪校集中型で高倍率
- 墨田川・光丘など:地域分散型で安定志向
この二極化が2026年度も続く見込みです。サッカー推薦は、「実力を評価してもらえる場」であると同時に、学業・態度・リーダー性を含めた総合力が問われる選抜です。
受験生は数字の倍率だけでなく、
- 学校の練習環境や顧問体制
- 通学圏や進学実績
- 自分のポジション・役割への理解
を踏まえ、自分に合った都立高校を選ぶことが重要です。「自分に合う都立×サッカー」の進路を冷静に見極めていきましょう。
<参考リンク>
令和8年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について
令和8年度文化・スポーツ等特別推薦実施校の選抜方法等一覧
文化・スポーツ等特別推薦の実技検査の内容等一覧



