都立難関高校への合格を目指す中学生とその保護者にとって、塾選びは重要な検討事項となっています。2024年度の都立高校入試において、首都圏で展開する大手進学塾・学習塾7社(ena、臨海セミナー、早稲田アカデミー、Z会進学教室、河合塾wings、栄光ゼミナール、SAPIX)の合格実績を詳細に分析したところ、各塾の特徴的な戦略が見えてきました。
特に注目したのは、各塾の志望校別の傾向です。都立トップ校である日比谷や御三家(日比谷・西・国立)を主なターゲットとしているのか、共通問題トップ校を見据えているのか、あるいは国立・私立の難関校と都立を併願で考えているのか。生徒層の特徴によって、各塾の戦略は大きく異なります。
また、教室展開と合格実績の関係からは、「効率性重視」と「利便性重視」という対照的なアプローチも浮かび上がってきました。都立・私立両方の入試結果と教室数データから、各塾の特徴と、効果的な塾選びのポイントを探っていきましょう。
2024年度都立入試における各塾の進学指導重点校・進学指導特別推進校の合格実績
都立高校の入試結果をベースに各塾の合格実績を分析しました。主な塾のすべての都立高校への合格者数を比較したいところでしたが、進学指導重点校と進学指導特別推進校の合格実績のみを公表している塾も多く、今回の分析ではこの二区分に絞って比較を行っています。
また、経年変化を追えれば各塾の実績の変遷がより明確になると考えられますが、2023年度や2022年度の過去データまで遡って公開している塾は限られていました。そのため、今回の分析では2024年度入試のデータを中心に、各塾の特徴や傾向を探ることとしました。
このような制約はあるものの、進学指導重点校と特別推進校という都立高校の中核を成す学校群での実績を比較することで、各塾の特色や戦略の違いが浮き彫りになってきています。
ena | 臨海セミナー | 早稲田アカデミー | Z会進学教室 | 河合塾wings | 栄光ゼミナール | SAPIX | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日比谷 | 63人 | 46人 | 79人 | 45人 | 24人 | 9人 | 30人 |
西 | 53人 | 11人 | 71人 | 59人 | 26人 | 12人 | 14人 |
国立 | 78人 | 21人 | 70人 | 27人 | 14人 | 10人 | 3人 |
戸山 | 70人 | 30人 | 61人 | 43人 | 17人 | 13人 | 3人 |
青山 | 40人 | 41人 | 28人 | 31人 | 32人 | 17人 | 12人 |
立川 | 80人 | 21人 | 21人 | 29人 | 20人 | 12人 | 1人 |
八王子東 | 66人 | 78人 | 11人 | 11人 | 9人 | 7人 | 1人 |
国分寺 | 71人 | 19人 | 25人 | 14人 | 9人 | 15人 | 1人 |
国際 | 22人 | 9人 | 20人 | 11人 | 2人 | 17人 | 2人 |
新宿 | 51人 | 24人 | 19人 | 35人 | 18人 | 33人 | 0人 |
小山台 | 32人 | 56人 | 17人 | 21人 | 18人 | 17人 | 6人 |
駒場 | 33人 | 53人 | 16人 | 11人 | 23人 | 31人 | 2人 |
小松川 | 30人 | 73人 | 8人 | 0人 | 5人 | 12人 | 0人 |
町田 | 14人 | 66人 | 4人 | 0人 | 8人 | 11人 | 0人 |
合計 | 703人 | 548人 | 450人 | 337人 | 225人 | 216人 | 75人 |
ena | 臨海セミナー | 早稲田アカデミー | Z会進学教室 | 河合塾wings | 栄光ゼミナール | SAPIX | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
重点校+特別推進校_計 | 703人 | 548人 | 450人 | 337人 | 225人 | 216人 | 75人 |
重点校のみ | 450人 | 248人 | 341人 | 245人 | 142人 | 80人 | 64人 |
(内、御三家) | 194人 | 78人 | 220人 | 131人 | 64人 | 31人 | 47人 |
(内、日比谷) | 63人 | 46人 | 79人 | 45人 | 24人 | 9人 | 30人 |
特別推進校のみ | 253人 | 300人 | 109人 | 92人 | 83人 | 136人 | 11人 |
塾別の特徴
ena
都立高校の進学指導重点校と進学指導特別推進校合わせて703人という最多の合格者数を達成し、特に御三家(日比谷・西・国立)では安定した合格実績を残しています。立川高校では80人という圧倒的な合格者数を出すなど、多くの重点校でトップの座を獲得している点が特徴的です。総数の多さは教室数の多さも影響していると考えられます。
臨海セミナー
548人という2番目の合格者総数を誇り、特に特別推進校での強さが光ります。小松川高校で73人、町田高校で66人という他塾を圧倒する合格実績を残すなど、特別推進校での圧倒的な強みを持っています。また八王子東高校でも78人と健闘しており、地域密着型の指導の成果が表れています。
早稲田アカデミー
450人で3番目の合格者数を記録。特に最難関校での実績が目立ち、日比谷高校で79人、西高校で71人と御三家での好調ぶりが際立っています。1教室あたりの合格者効率が高く、集中的な指導体制の成果が表れているのではないでしょうか。
Z会進学教室
合計337人という実績を残し、特に西高校での59人という健闘が光ります。他の大手塾に比べ教室数は少ないものの、1教室あたりの合格者数は高く、効率的な指導を実現しています。
河合塾wings
225人という実績の中で、特に青山高校での32人など、特定の学校での健闘が目立ちます。地域性を活かした戦略的な展開を行っている様子が窺えます。
栄光ゼミナール
216人の合格者を出し、特に特別推進校での安定した実績が特徴です。中堅校を中心としながらも、上位校まで幅広くカバーする指導体制を確立しています。
SAPIX
総数は75人と規模は小さいものの、日比谷高校で30人という実績を残すなど、最難関校に特化した指導には定評があります。私立難関校との併願を視野に入れた受験指導に強みを持っています。
学校別の特徴
日比谷高校(都立最難関)への合格実績
都立高校の最難関校として、各塾とも特に力を入れている様子が顕著です。早稲田アカデミーが79人と最多の合格者を出しており、続いてenaの63人、臨海セミナーの46人と、大手塾の総合力の高さが表れています。また、SAPIXの30人という実績も、同塾の規模を考えると特筆すべき成果と言えます。
御三家(日比谷・西・国立)への合格実績
都立のトップ校群である御三家では、enaが総じて強い実績を残しています。早稲田アカデミーも日比谷79人、西71人、国立70人と好調な成績を収めており、最上位校での指導力の高さを示しています。各塾とも御三家対策に注力している様子が窺え、中堅規模の塾でも一定の実績を残しています。
その他の進学指導重点校への合格実績
戸山、青山、立川、八王子東の重点校では、enaが多くの学校でトップの合格実績を誇ります。特に立川での80人という数字は圧巻です。臨海セミナーも八王子東で78人を記録するなど、地域によって強さを発揮。各塾の地域性や指導特性が実績に反映されている様子が見て取れます。
進学指導特別推進校への合格実績
臨海セミナーの強さが際立つ領域です。小松川で73人、町田で66人など、他塾を圧倒する合格実績を残しています。特に地域密着型の展開を行う臨海セミナーは、各校の入試傾向を熟知した指導により、安定した合格実績を維持しています。
全体的な傾向
- 大手総合塾(ena、臨海セミナー、早稲田アカデミー)の3社が市場の上位を占めており、豊富な教材と体系的な指導システムを活かした総合力の高さを示しています。特にenaは進学指導重点校と進学指導特別推進校で合わせて703人という最多の合格者を輩出し、市場でのリーダー的存在となっています。
- 各塾で得意とする学校に明確な特色があり、それぞれの塾の指導方針や地域戦略が実績に反映されています。例えば、臨海セミナーの特別推進校での強さ、早稲田アカデミーの御三家での好調ぶりなど、各塾の特徴が顕著に表れています。
- 御三家を中心とした上位校では、SAPIXのような中堅規模以下の塾も健闘しています。必ずしも塾の規模や総合力だけでなく、特化型の指導や専門性の高さも重要な要素となっていることが窺えます。
- 特別推進校では、大手総合塾が圧倒的な合格実績を誇っており、市場を牽引しています。特に臨海セミナーの強さが際立っており、地域に根ざした指導と豊富な受験指導ノウハウの重要性が示唆されています。都立中堅校への合格には、体系的な指導体制と地域に密着した展開が効果的であることが分かります。
これらの実績は、塾選びの重要な判断材料となりますが、単純な合格者数だけでなく、各塾の特色や志望校との相性を十分に検討することが、より適切な選択につながるでしょう。
2024年度の国立・私立・都立難関高校の入試における各塾の合格実績
これまでは都立の難関高校における合格実績を中心に分析してきましたが、各塾の戦略をより深く理解するには、生徒の志望校傾向にも注目する必要があります。
都立のトップ校である日比谷や御三家(日比谷・西・国立)を第一志望とする生徒が多いのか、それとも共通問題トップ校を目指す生徒が中心なのか。あるいは、開成や筑波大附属といった国立・私立の難関校を第一候補として、都立を併願先として考える生徒が多いのか。このような生徒層の特徴は、各塾の指導方針や合格実績に大きく影響を与えていると考えられます。
そこで、先ほどの都立高校の合格実績データに加えて、特別推進校と同等以上の難易度を持つ国立・私立高校(開成、国立附属、早慶附属、GMARCH附属など)の合格実績も合わせて分析し、各塾の特徴をより多角的に見ていきたいと思います。
ena | 臨海セミナー | 早稲田アカデミー | Z会進学教室 | 河合塾wings | 栄光ゼミナール | SAPIX | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
開成+国立附属 (学附・筑附・筑駒・お茶の水) | 37人 | 66人 | 361人 | 80人 | 21人 | 42人 | 153人 |
早慶附属・ICU附属 | 124人 | 365人 | 1,627人 | 71人 | 23人 | 161人 | 269人 |
GMARCH附属 | 189人 | 585人 | 1,812人 | 96人 | 78人 | 317人 | 238人 |
男子難関私立 (城北・巣鴨・桐朋) | 42人 | 13人 | 148人 | 85人 | 19人 | 27人 | 35人 |
都立_重点校 | 450人 | 248人 | 341人 | 245人 | 142人 | 80人 | 64人 |
都立_特別推進校 | 253人 | 300人 | 109人 | 92人 | 83人 | 136人 | 11人 |
合計 | 1,095人 | 1,577人 | 4,398人 | 669人 | 366人 | 763人 | 770人 |
塾の特徴と戦略の違い
早稲田アカデミー
合計4398人と圧倒的な合格者数を誇り、その実績は都立・私立の両方で際立っています。 開成・国立附属(361人)、早慶附属・ICU附属(1627人)、GMARCH付属(1812人)と、難関私立からGMARCHまで幅広い層で強みを発揮。特に早慶・ICU、GMARCHでの圧倒的な合格者数は、同塾の総合的な指導力の高さを示しています。 都立でも御三家を含む重点校で好成績を残しており、特に日比谷(79人)、西(71人)での実績は、同塾の指導の質の高さを裏付けています。 幅広い校種での実績は、充実した教材と体系的な指導システムの成果と言えるでしょう。
臨海セミナー
私立実績1577人に加え、都立でも確かな実績を持ちます。 都立特別推進校での300人という実績は特筆すべき強みで、小松川(73人)、町田(66人)など、各校での圧倒的な数字が示すように、地域に根ざした指導が功を奏しています。 GMARCH付属(585人)での健闘も、中堅~上位校までカバーする総合的な指導力を示唆しています。 地域密着型の展開と、各校の入試傾向を熟知した的確な指導が、この実績を支えていると考えられます。
ena
都立重点校(450人)での強さが最大の特徴。特に立川(80人)など、多くの重点校でトップの合格実績を誇ります。 御三家での実績も好調で、日比谷、西、国立のいずれでも安定した合格者を輩出。都立上位校に対する深い理解と的確な指導方針が窺えます。 私立実績は他塾と比べると控えめながら、GMARCH付属(189人)など、一定の実績を確保。都立重点校への特化戦略が明確に表れています。
SAPIX
開成・国立附属(153人)、早慶附属・ICU附属(269人)と、難関私立での強みが顕著です。 都立は合格者総数こそ少ないものの、日比谷(30人)など最上位校での健闘が目立ちます。 少数精鋭の徹底した指導により、難関校に特化した塾としての地位を確立しています。
Z会進学教室
都立重点校(245人)での実績が目立ち、特に西(59人)での健闘は特筆すべき点です。 男子難関私立(85人)など、選択と集中の戦略が明確に表れています。 合格者総数は大手と比べると控えめですが、志望校別の的確な指導と、独自の教材を活かした学習システムにより、確実な合格実績を残しています。
栄光ゼミナール
GMARCH付属(317人)など中堅私立で安定した実績を示しています。 都立も特別推進校(136人)を中心に健闘。特に各校での合格者数のバランスの良さが特徴的です。 中堅校を中心としながらも、上位校まで幅広くカバーする指導体制が整っていることが窺えます。
河合塾wings
比較的小規模ながら、都立重点校(142人)で一定の実績を確保。 青山(32人)など、特定の学校での健闘が目立ちます。 GMARCH付属(78人)でも実績を残しており、的確な進路指導と個別最適化された指導の成果が表れています。
市場ポジショニングの違い
- 総合型: 早稲田アカデミー、臨海セミナーに代表される、私立・公立両方で幅広い層をカバーする塾群。 豊富な教材と体系的なカリキュラム、多様な志望校に対応できる指導体制が特徴。 合格実績の層の厚さは、これらの塾の総合力の高さを示しています。
- 都立重点型: ena、Z会進学教室など、都立上位校に強みを持つ塾群。 都立入試の特性を熟知し、各校の出題傾向に即した的確な指導を展開。 地域性を活かした戦略的な展開により、特定校種での高い実績を実現。
- 私立難関型: SAPIXに代表される、難関私立と都立最上位校に特化した塾群。 高度な教材と徹底した指導により、最難関校への合格を実現。 選抜された生徒への集中的な指導が特徴。
- バランス型: 栄光ゼミナール、河合塾wingsなど、中堅校を中心に幅広く指導する塾群。 個々の生徒の志望校や学力に応じた柔軟な指導を展開。 着実な合格実績と、きめ細かい進路指導が特徴。
指導の特徴
- 大手総合塾: 豊富な教材と指導ノウハウを活かし、多様な進路に対応。 システマチックな指導により、大規模な合格実績を実現。 模試や進路指導を含めた総合的なサポート体制が強み。 データに基づく的確な進路指導と、充実した演習環境の提供。
- 中規模塾: 特定の学校や層に特化した専門的な指導を展開。 きめ細かい個別指導と、的確な受験戦略の提案。 各校の入試傾向を熟知した、効率的な受験対策。 地域性や校風を考慮した、実践的な指導アプローチ。
これらの分析結果から、受験生や保護者が塾を選ぶ際の重要なポイントが見えてきます。
まず第一に、志望校の特性と塾の強みの適合性を慎重に見極める必要があります。例えば日比谷高校を目指すのであれば、最難関校での実績が高い塾を選ぶことが重要でしょう。特に御三家を志望する場合は、中堅規模以下の塾でも好実績を残している例があることにも注目すべきです。
次に、塾の指導方針や教材の質、個別サポート体制についても十分な検討が必要です。大手総合塾のシステマチックな指導を好む生徒もいれば、きめ細かな個別指導を重視する生徒もいるでしょう。
また、地域性や通塾のしやすさも重要な要素です。いくら実績の高い塾でも、通学時間が長すぎては継続的な学習に支障をきたす可能性があります。
さらに、公立・私立のバランスを考慮した進路選択の可能性も検討すべきです。都立一本に絞るのか、私立との併願も視野に入れるのかによって、適切な塾選びは変わってくるでしょう。
最後に、塾の過去の実績パターンと自身の志望校との整合性を確認することも大切です。単純な合格者数だけでなく、どの学校でどのような実績を残しているかという傾向を見極めることで、より的確な選択が可能になります。
2024年度入試における各塾の1教室あたりの国立・私立・都立難関高校延べ合格者数の比較
これまでの合格実績データに加え、各塾の教室展開戦略にも着目すると、より興味深い特徴が浮かび上がってきました。
都立高校と国立高校は制度上、1人が1校しか受験・合格できませんが、私立高校は試験日程が異なれば複数校の受験が可能です。また、多くの受験生が都立・国立・私立を併願受験する実態があります。
そこで今回は、各塾の国立・私立・都立高校への延べ合格者数を教室数で割ることで、「1教室あたりの合格創出力」という新たな視点から分析を試みました。この指標を通じて、各塾の指導効率や戦略的特徴を探っていきたいと思います。
ena | 臨海セミナー | 早稲田アカデミー | Z会進学教室 | 河合塾wings | 栄光ゼミナール | SAPIX | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
教室数(都内) | 183校 | 69校 | 64校 | 13校 | 18校 | 101校 | 15校 |
開成+国立附属 (学附・筑附・筑駒・お茶の水) | 0.2人 | 1.0人 | 5.6人 | 6.2人 | 1.2人 | 0.4人 | 10.2人 |
早慶附属・ICU附属 | 0.7人 | 5.3人 | 25.4人 | 5.5人 | 1.3人 | 1.6人 | 17.9人 |
GMARCH附属 | 1.0人 | 8.5人 | 28.3人 | 7.4人 | 4.3人 | 3.1人 | 15.9人 |
都立_重点校 | 2.5人 | 3.6人 | 5.3人 | 18.8人 | 7.9人 | 0.8人 | 4.3人 |
都立_特別推進校 | 1.4人 | 4.3人 | 1.7人 | 7.1人 | 4.6人 | 1.3人 | 0.7人 |
ena | 臨海セミナー | 早稲田アカデミー | Z会進学教室 | 河合塾wings | 栄光ゼミナール | SAPIX | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 6.0人 | 22.9人 | 68.7人 | 51.5人 | 20.3人 | 7.6人 | 51.3人 |
国立・私立難関校 | 2.0人 | 14.1人 | 57.7人 | 19.7人 | 6.7人 | 5.0人 | 38.2人 |
都立難関校 | 3.8人 | 7.9人 | 7.0人 | 25.9人 | 12.5人 | 2.1人 | 5.0人 |
大規模展開型
- enaは都内最多の183校という圧倒的な教室数を誇りますが、1教室あたりの合格創出力は6.0人と比較的低めです。これは広範な地域展開による利便性重視の戦略が窺えます。しかし、都立難関校においては1教室あたり3.8人と一定の効率性を保っています。
効率重視型
- 早稲田アカデミーは64校という中規模の展開ながら、1教室あたり延べ68.7人という圧倒的な合格創出力を示しています。特に国立・私立難関校では1教室あたり延べ57.7人という高い実績を残しており、集中的な指導体制の成功を表しています。
- SAPIXは15校という限定的な展開で、1教室あたり延べ51.3人という高い合格創出力を誇っています。特に開成・国立附属では1教室あたり延べ10.2人と、難関校に特化した戦略が成功を収めています。
バランス型
- 臨海セミナーは69校の展開で、1教室あたり延べ22.9人の合格を創出。バランスの取れた実績を示しています。国立・私立難関校では1教室あたり延べ14.1人と、着実な成果を上げています。
専門特化型
- Z会進学教室は13校という少数展開ながら、1教室あたり延べ51.5人という高い合格創出力を示しています。特に都立難関校では1教室あたり25.9人と、特化型戦略の成功を示しています。
戦略的特徴
- 効率性重視戦略
早稲田アカデミー、SAPIX、Z会進学教室は、比較的少ない教室数で高い合格実績を達成。集中的な指導と質の高いカリキュラムによる効率的な合格者創出を図っています。 - 地域密着戦略
enaは多店舗展開により、地域に根ざしたきめ細かいサービスを提供。教室数の多さを活かした通塾利便性の向上を図っています。 - バランス戦略
臨海セミナーは中規模の展開で、効率性と利便性のバランスを追求。河合塾wings、栄光ゼミナールも同様の傾向にあります。
この分析から、各塾は以下のような特徴的な戦略を取っていることが分かります。
- 教室数の多寡は必ずしも合格実績と比例せず、各塾の戦略的選択を反映
- 効率性の高い塾は、限定的な教室展開で質の高い指導を実現
- 大規模展開型は、利便性と地域密着型サービスで差別化
- 教室あたりの合格者数は、各塾の指導方針や対象層の違いを反映
これらの特徴を踏まえると、受験生は単純な合格実績だけでなく、各塾の戦略的特徴と自身のニーズ(通塾のしやすさ、指導の濃さ、志望校の特性など)との適合性を考慮して塾を選択することが重要と言えるでしょう。
「合格創出力か利便性か」浮かび上がる各塾の戦略 ~2024年度入試実績から読み解く~
2024年度入試における各塾の実績分析から、現代の学習塾業界における多様な戦略と特色が明らかになってきました。
大手総合塾の代表格である早稲田アカデミーは、都内64校という中規模の展開ながら、1教室あたり延べ68.7人という圧倒的な合格創出力を示しています。特に早慶附属・ICU附属での1627人、GMARCH附属での1812人という実績は、同塾の総合的な指導力の高さを物語っています。
一方、enaは都内183校という圧倒的な教室数を展開し、都立重点校では450人という高い実績を残しています。1教室あたりの合格者数は延べ6.0人と合格創出力は相対的に低めですが、これは地域密着型の戦略による利便性重視のアプローチと解釈できます。
SAPIXは15校という限定的な展開で、開成・国立附属や早慶附属での強みを発揮。1教室あたり延べ51.3人という高い効率性は、難関校に特化した集中的な指導の成果を示しています。
臨海セミナーは69校の展開で、特に都立特別推進校での300人という実績が特徴的です。1教室あたり延べ22.9人という数字は、効率性と利便性のバランスを追求する同塾の戦略を反映しています。
Z会進学教室は13校という少数展開ながら、都立重点校での好調な実績が目立ちます。1教室あたり延べ51.5人という高い合格創出力は、選択と集中による戦略の成功を示唆しています。
これらの分析から、現代の学習塾業界では、大きく分けて「効率性重視」と「利便性重視」という二つの方向性が見えてきます。早稲田アカデミーやSAPIXに代表される効率性重視の塾は、限定的な教室展開で質の高い指導を実現。一方、enaに代表される利便性重視の塾は、多店舗展開により地域に密着したサービスを提供しています。
また、臨海セミナーのように、この両者のバランスを取る戦略を選択する塾も存在します。これは、受験生の多様なニーズに応える現代の学習塾業界の一つの答えとも言えるでしょう。
このような業界の多様化は、受験生・保護者にとってより細やかな選択肢を提供する一方で、塾選びの難しさも示唆しています。今後は、単純な合格実績だけでなく、各塾の戦略的特徴と自身のニーズ(通塾のしやすさ、指導の濃さ、志望校の特性など)との適合性を慎重に見極めることが、より重要になってくると考えられます。
2024年度の入試実績は、変化する教育環境の中で、各塾が独自の強みを活かしながら進化を続けていることを示しています。この傾向は、今後も続くものと予想されます。

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