2024年度都立高校入試において、進学指導推進校15校のうち、多摩地区を中心とした7校の倍率推移を分析します。2007年より東京都教育委員会が指定を開始した進学指導推進校は、進学指導特別推進校に次ぐ進学校として、地域のニーズやバランスを考慮しながら都内各地に配置されています。
放課後や長期休暇中の補習・講習、習熟度別授業の導入、個別指導の充実など、各校とも進学指導の充実を図り、進学実績の向上に重点を置いています。2024年度からは新たに上野、昭和の2校が加わり、計15校となりました。
男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という大きな制度変更の中、各校の特色ある教育活動への評価は概ね維持されているものの、倍率の変動には学校ごとに特徴的な傾向が見られました。国公立・私立難関大学への進学を目指す受験生にとって重要な選択肢となる進学指導推進校の動向を、後編として7校の事例から詳しく見ていきます。
<都立高校の倍率の種類や進学指導重点校・特別推進校・推進校(多摩地区以外)の倍率について詳しく書いた記事はこちら>
日野台高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

1979年に開校し、「叡智・情操・健康」を教育目標に掲げる都立日野台高校の2024年度入試では、前年度とほぼ同水準の倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.41倍で、前年度の1.43倍からわずかに低下し、進学指導重点校平均(1.57倍)を下回る結果となりました。応募倍率(2月初旬)では1.42倍となり、前年度の1.44倍とほぼ同水準となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.39倍と若干低下し、前年度の1.42倍をやや下回りました。受検倍率(2月下旬)では1.34倍となり、前年度の1.32倍と比較すると0.02ポイント上昇しています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.32倍となり、前年度の1.32倍と同水準を維持しました。
2007年より進学指導推進校の指定を受け、土曜授業や習熟度別少人数授業を実施する同校は、2024年度入試において安定した動きを見せました。2021年度の高い倍率(応募倍率1.82倍)には及ばないものの、前年度と同程度の水準を維持しています。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更がある中で、日野台高校は比較的安定した倍率を保っています。JR中央線日野駅から徒歩13分という立地に加え、3年次の選択科目の充実など進学指導に重点を置いた教育内容への評価が、一定の水準を維持することにつながっているといえます。
倍率推移のパターンを見ると、各段階で安定した水準を保っており、「夢の実現に向けて努力する生徒が集い、新たな伝統を創造する」という学校目標への支持が継続していることを示しています。
昭和高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

1949年に定時制課程として創立され、「二兎を追い二兎を得る」をスローガンに掲げる都立昭和高校の2024年度入試では、前年度を下回る倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.69倍で、前年度の2.07倍から大きく低下したものの、進学指導推進校平均(1.57倍)を上回る水準となりました。応募倍率(2月初旬)では1.54倍まで低下し、前年度の1.92倍を大きく下回る結果となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.50倍とさらに低下し、前年度の1.89倍を大きく下回りました。受検倍率(2月下旬)では1.42倍となり、前年度の1.80倍と比較すると0.38ポイントの大幅な減少となっています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.41倍となり、前年度の1.79倍を大きく下回る結果となりました。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更の影響は大きく見られたものの、JR青梅線東中神駅から徒歩4分という好立地に加え、英語教育推進校として外国人講師による授業を実施するなど、特色ある教育活動への基本的な評価は保たれているといえます。
倍率推移のパターンを見ると、すべての段階で前年度を下回る結果となりましたが、進学指導推進校としての新たなスタートへの期待は依然として高く、多摩地域における進学校としての発展が注目されます。
武蔵野北高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

1978年に地元市民による都立高校誘致運動を背景に創立され、「ムサキタ」の愛称で親しまれる都立武蔵野北高校の2024年度入試では、前年度を下回る倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.26倍で、前年度の1.52倍から大きく低下し、進学指導推進校平均(1.57倍)を下回る水準となりました。応募倍率(2月初旬)では1.27倍となり、前年度の1.59倍を大きく下回る結果となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.35倍とやや上昇したものの、前年度の1.55倍を下回りました。受検倍率(2月下旬)では1.24倍となり、前年度の1.37倍と比較すると0.13ポイントの減少となっています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.23倍となり、前年度の1.36倍を下回る結果となりました。
2007年に進学指導推進校の指定を受けた同校は、2024年度入試において大きな変化を見せました。2021-22年度の安定した倍率(2022年度校長会調査時1.32倍)をさらに下回る結果となり、進学指導推進校平均を下回る水準で推移しています。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更の影響は大きく見られたものの、近隣で同難度の小金井北高校、調布北高校と合わせて「サンキタ」と呼ばれる存在感や、文化祭(緑光祭)をはじめとする充実した学校行事、さらには近年の校舎リニューアルやWi-Fi整備など、教育環境の充実への基本的な評価は保たれているといえます。
倍率推移のパターンを見ると、すべての段階で前年度を下回る結果となりましたが、武蔵野中央公園に隣接する恵まれた環境と文武両道の校風は、地域における進学校としての魅力を今後も支えていくものと考えられます。
小金井北高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

1979年に開校し、「小北(こきた)」の愛称で親しまれる都立小金井北高校の2024年度入試では、前年度を大きく上回る倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.65倍で、前年度の1.18倍から大幅に上昇し、進学指導推進校平均(1.57倍)を上回る水準となりました。応募倍率(2月初旬)では1.79倍まで上昇し、前年度の1.41倍を大きく上回る結果となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.68倍とやや低下したものの、前年度の1.41倍を上回り、受検倍率(2月下旬)では1.57倍となり、前年度の1.28倍と比較すると0.29ポイントの増加となっています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.55倍となり、前年度の1.27倍を大きく上回る結果となりました。
2010年に進学指導推進校の指定を受けた同校は、2024年度入試において特徴的な変化を見せました。2021-22年度の倍率(2022年度校長会調査時1.38倍)を大きく上回る結果となり、全体を通して進学指導推進校平均を上回る水準で推移しています。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更の中でも、近隣の武蔵野北高校、調布北高校と合わせて「サンキタ」と呼ばれる存在感や、2015年の校舎改築による充実した教育環境、さらには進学指導推進校、英語教育推進校、理数研究校としての特色ある教育活動への評価は高まっているといえます。
倍率推移のパターンを見ると、校長会調査時から応募倍率にかけての上昇が顕著であり、同校の教育内容への期待の高まりが表れています。また、「創造」「自律」「努力」を教育目標に掲げ、体育大会、合唱コンクール、桜樹祭(文化祭)を「小北三大行事」として重視する伝統は、多摩地区における進学校としての魅力を一層高めているものと考えられます。
調布北高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

1973年に開校し、蝶の研究者として知られる初代校長の春田俊郎にちなんで「おほむらさき」を象徴とする都立調布北高校の2024年度入試では、特徴的な倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.31倍で、前年度の1.43倍を下回り、進学指導推進校平均(1.57倍)を大きく下回る水準となりました。応募倍率(2月初旬)では1.54倍まで上昇し、前年度の1.53倍とほぼ同水準となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.59倍とさらに上昇し、前年度の1.48倍を上回りました。受検倍率(2月下旬)では1.44倍となり、前年度の1.36倍と比較すると0.08ポイントの増加となっています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.41倍となり、前年度の1.34倍をわずかに上回る結果となりました。
同校は、2021-22年度の高い倍率(2022年度校長会調査時1.56倍)には及ばないものの、入試が進むにつれて倍率が上昇する特徴的なパターンを示しています。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更の中でも、近隣の武蔵野北高校、小金井北高校と合わせて「サンキタ」と呼ばれる存在感や、電気通信大学をはじめとする近隣大学との連携、特進クラスの設置、サポートティーチャー制度など、特色ある教育活動への評価は保たれているといえます。
倍率推移のパターンを見ると、校長会調査時の低い倍率から、応募倍率、最終応募倍率と段階的に上昇する傾向が見られ、同校の教育内容への理解が深まるにつれて志願者が増加する傾向が表れています。MARCH以上の私立大学や国公立大学への進学実績と、充実した進学指導体制は、多摩地区における進学校としての地位を支える要素となっています。
多摩科学技術高校の入試倍率推移分析(2021年~2024年)

2010年に都立小金井工業高校を前身として開校し、多摩地域の中核的な理系進学校として発展してきた都立多摩科学技術高校(通称:多摩科技、TKG)の2024年度入試では、前年度を下回る倍率推移を示しました。
校長会調査時(12月中旬)の倍率は1.31倍で、前年度の1.42倍を下回り、進学指導推進校平均(1.57倍)を大きく下回る水準となりました。応募倍率(2月初旬)では1.72倍まで上昇したものの、前年度の1.84倍を下回る結果となりました。
最終応募倍率(2月中旬)は1.71倍とやや低下し、前年度の1.80倍を下回りました。受検倍率(2月下旬)では1.46倍となり、前年度の1.52倍と比較すると0.06ポイントの減少となっています。最終的な合格倍率(3月初旬)は1.41倍となり、前年度の1.46倍をわずかに下回る結果となりました。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校として3期目を迎えた同校は、2024年度入試において大きな変化を見せました。2021-22年度の高い倍率(2022年度校長会調査時1.63倍、応募倍率2.05倍)には及ばないものの、小規模クラス制(1クラス35人)や充実した研究設備、先端技術4領域(BT/ET/IT/NT)に基づく特色ある教育への評価は保たれています。
2024年度入試からの男女合同定員化と私立高校授業料の実質無償化という制度変更の中でも、進学指導推進校としての進学実績や、科学技術アドバイザー制度、土曜授業の実施など、理系進学校としての独自の教育プログラムは、同校の強みとなっています。
倍率推移のパターンを見ると、12月の校長会調査時から2月初旬の応募倍率にかけての上昇が顕著であり、同校の特色ある教育内容への理解が深まるにつれて志願者が増加する傾向が表れています。充実した実験・研究設備と理系大学への進学実績は、都内屈指の理系進学校としての地位を支える要素となっています。
多摩地区の進学指導推進校、倍率変動に明暗 |小金井北高が上昇、武蔵野北は低下傾向
7校の倍率推移を分析すると、2024年度入試では学校ごとに異なる特徴が浮かび上がりました。昭和高校は前年度から大幅な低下が見られたものの進学指導推進校平均を上回り、小金井北高校は応募倍率が前年度を大きく上回るなど上昇傾向を示しました。一方、武蔵野北高校や多摩科学技術高校、墨田川高校では全体的に前年度を下回る結果となり、特に校長会調査時の低下が目立ちました。
注目すべき点として、校長会調査時から応募倍率にかけての変動が各校で異なることが挙げられます。小金井北高校や調布北高校のように上昇傾向を示す学校がある一方で、昭和高校のように低下傾向を示す学校も見られ、志願動向の多様化が進んでいることがうかがえます。
また、「サンキタ」と呼ばれる武蔵野北、小金井北、調布北の3校では、小金井北高校が好調な一方で武蔵野北高校が苦戦するなど、同じ地域でも異なる結果となりました。各校の教育活動や進学実績への評価が、より個別具体的になってきていることが示唆されます。
2024年度入試における制度変更の影響は避けられないものの、各校の特色ある教育活動や伝統は一定の評価を得ており、今後も進学指導推進校としての発展が期待されます。

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<データ参照元>
各段階における倍率は、以下の公表されているデータを参照・加工し(2023年以前データは男女別の数値を男女合計数値に加工)算出しています。
◆令和3~6年度 都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査の結果について
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2021/release2021010701.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2022/release2022010701.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2023/release2023010601.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2024/release2024010903.html
◆令和3~6年度 東京都立高等学校入学者選抜応募状況(学力検査入学願書受付)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2021/release2021020904.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2022/release2021020802.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2023/release2023020903.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2024/release2024020803.html
◆令和3~6年度 東京都立高等学校入学者選抜応募状況(最終応募状況)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/highschool/past/firstapplication/release20210215.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/highschool/past/firstapplication/release20220214_01.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/highschool/past/firstapplication/release20230214_02.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/highschool/past/firstapplication/release20240214_02.html
◆令和3~6年度 東京都立高等学校入学者選抜受検状況
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2021/release2021022102.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2022/release2022022106.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2023/release2023022107.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2024/release2024022108.html
◆令和3~6年度 東京都立高等学校入学者選抜合格発表
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2021/release2021030202.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/highschool/archives/application/release2022030102.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2023/release2023030105.html
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/pressrelease/2024/release2024030103.html