
都立園芸高校の歴史と伝統
東京都立園芸高等学校は、1908年(明治41年)に東京府立園芸学校として開校した日本初の園芸学校です。2024年現在で創立116年を迎える歴史と伝統を持ち、我が国の農業・園芸教育の中心を担ってきた学校です。
当初は男子のみの5年制で寮制の学校でしたが、戦後の1949年に共学となり、1989年には初めて女子の生徒数が男子を上回りました。2006年には学科改編を行い、現在の園芸科・食品科・動物科の3学科体制となりました。
歴代の校長には農業教育に貢献した著名人が多く、特に初代校長の熊谷八十三は日米友好の証である桜とハナミズキの交換に尽力した人物として知られています。また、日本梨の新品種「菊水」「八雲」の育成や、現在広く栽培されている「三水」(豊水・幸水・新水)のもとになった品種の開発など、日本の農業発展に大きな貢献をしてきました。
都立園芸高校の立地と最寄り駅、周辺環境
住所 | 東京都世田谷区深沢5-38-1 |
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最寄り駅 | ・東急大井町線「等々力駅」下車 徒歩15分 ・東急バス利用の場合 (渋82)渋谷駅行き (等13)梅ヶ丘駅行き (等12)成城学園前駅行き →等々力駅からバス5分、「園芸高校前」下車徒歩3分 ・東急田園都市線「桜新町駅」下車徒歩20分 ・東急バス利用の場合 (黒07)目黒駅行き (都立01)都立大学駅北口行き →桜新町駅からバス10分、「日本体育大学前」下車徒歩5分 |
最寄り駅からのアクセス
- 東急大井町線等々力駅より徒歩15分
- バスでのアクセス
「園芸高校前」バス停(徒歩3分):世田谷駅、成城学園前駅、渋谷駅からのバス路線あり
「日本体育大学前」バス停(徒歩5分):桜新町駅、二子玉川駅、恵比寿駅、自由が丘駅からのバス路線あり
周辺環境
世田谷区深沢五丁目という閑静な住宅街に位置し、東京ドーム2.3個分(約9万㎡)という広大な校地を有しています。校地の約7割を庭園や圃場が占める緑豊かな環境で、「正門から入って100mのイチョウ並木」は多くの人に感動を与える景観となっています。都会の中にありながら、木々を抜ける風や鳥たちのさえずりに満ちた「百年の森」に囲まれた学習環境が特徴です。
都立園芸高校の校風と教育方針
校訓
「勤勉、勤労」を校是とし、前向きで労をいとわない精神を重視しています。
教育目標
- 幅広い知識と教養、農業に関する専門技能、科学的態度を身につけ、自ら考え行動する態度を養う
- 互いの人格を尊重し、思いやりをもって行動する態度を養う
- 自立及び自律の精神を培うとともに、勤労を重んじ主体的に社会の発展に寄与する態度と健やかな身体を養う
- 伝統・文化を尊重し、その継承と新しい文化の創造に貢献しうる能力や態度を養う
- 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う
特色ある教育活動
- 「体験・体感」を重視した実践的な農業教育
- 園芸・食品・動物の3学科それぞれに専門性の高い教育プログラム
- 多様な資格取得支援(日本農業技術検定、技能士資格、調理師免許など)
- SDGsの理念を活かした持続可能な農業と環境の両立
- JGAP(農業生産工程管理)認証の取得
- 「高等学校DX加速化推進事業」指定校としてのスマート農業技術導入
- アメリカ合衆国バージニア州やベトナム社会主義共和国の学校との国際交流
独自の校風
「緑と食と命の学園」としての豊かな自然環境の中で、生徒はゆったりとした学習環境で心豊かに学校生活を送っています。全日制課程は各学年4クラス(園芸科2、食品科1、動物科1)の少人数制で、きめ細かな指導が行われています。農業に関する専門教育を通じて、実践的産業人の育成と、「答えのない課題」と向き合う力、変化の激しい時代に「学び続ける」人材の育成を目指しています。
都立園芸高校の進路指導(進学・就職)
国公立大学合格実績
静岡大学(農学部)、高知大学(農林海洋科学部)、帯広畜産大学(畜産学部)、宮崎大学(農学部)など、農学系国立大学への合格実績があります。
私立大学合格実績
【主な合格大学】
- 東京農業大学:農学部、地域環境科学部、国際食料情報学部など
- 日本大学:生物資源科学部
- 麻布大学:生命・環境科学部、獣医学部
- 日本獣医生命科学大学:獣医学部、応用生命科学部
- 北里大学:海洋生命科学部、獣医学部
- 明治大学:農学部
- 玉川大学:農学部、工学部
- 帝京科学大学:生命環境学部
短期大学合格実績
女子栄養大学短期大学部、目白大学短期大学部(製菓学科)、神奈川歯科大学短期大学部(看護学科)、東京立正短期大学(幼児教育専攻)、新渡戸文化短期大学、相模原女子大学短期大学部など
専門学校合格実績
【園芸・農業系】
- テクノ・ホルティ園芸専門学校
- タキイ研究農場付属園芸専門学校
- JFHD学園日本フラワーカレッジ
【調理・製菓系】
- 東京栄養食糧専門学校
- 織田調理師専門学校
- 日本菓子専門学校
- 東京製菓専門学校
【動物系】
- 中央動物専門学校
- 東京動物専門学校
- 国際動物専門学校
就職実績
【園芸・造園関連】
- 東光園緑化株式会社
- 大森造園建設株式会社
- 西村造園土木株式会社
- 株式会社東日本板橋花き
- 有限会社うねめ農場
【食品・飲食関連】
- 株式会社東京會舘
- 株式会社虎屋
- 株式会社千疋屋総本店
- 株式会社人形町今半
- 富士屋ホテル株式会社
【その他】
- 明治神宮(巫女)
- 松風馬事センター(競走馬育成・調教・管理)
- 自衛隊
- 東京都教育委員会(実習助手)
進路指導の特徴と傾向
3年間の進路データ(2021〜2023年度)を分析すると、約83%が進学、約13%が就職という結果になっています。特徴的なのは学科による進路傾向の違いです。
- 園芸科:大学・短大進学(44%)と専門学校進学(36.5%)がほぼ同率で、就職(16%)も一定数あり、多様な進路選択が特徴
- 食品科:専門学校進学(36.4%)が最も多く、大学・短大進学(42.4%)と就職(15.2%)もバランスよく分布
- 動物科:大学・短大進学(60.7%)が際立って高く、特に獣医・動物科学系の学部進学が主流、就職率は約3%と低い
専門高校でありながら高い進学率を維持していること、特に農業・園芸・食品・動物関連の専門分野に進む生徒が多いこと、学科の専門性を活かした就職先への就職が実現していることが特徴です。

都立園芸高校のイベント・学校行事
主な年間行事
- 4月:入学式、新入生歓迎会
- 5月:遠足、バラ園公開、学校農業クラブ校内意見発表会
- 6月:体育祭、宿泊防災訓練(1学年)
- 7月:下田農場実習、中学生向けオープンスクール
- 8月:夏季休業中実習、農業クラブ関東大会参加
- 9月:修学旅行(2学年)、防災訓練・普通救命講習
- 10月:学校説明会、農業クラブ全国大会参加
- 11月:園芸展(文化祭)
- 12月:世田谷7校2園クリーン作戦(地域清掃活動)
- 1月:課題研究発表会
- 2月:三年生を送る会
- 3月:卒業式、芸術鑑賞教室、下田農場実習
特色ある行事
- バラ園公開:5月に開催され、約200種類のバラを一般公開、生徒ボランティアが案内し2,000人以上の来校者でにぎわう
- 園芸展:11月に開催される文化祭で、各学科の学習成果を展示発表する本校最大のイベント
- 世田谷7校2園クリーン作戦:地域貢献活動として近隣施設や学校と連携して行う清掃活動
- 課題研究発表会:3年間の学びの集大成として、各生徒が取り組んだ研究成果を発表
都立園芸高校の部活動や課外活動
運動部
硬式テニス部、ソフトテニス部、バレーボール部、バスケットボール部(男子・女子)、バドミントン部、サッカー部、軟式野球部、卓球部、剣道部、柔道部、合気道部、陸上部、水泳部、ダンス部など
文化部
- 農業関連:野菜部、果樹部、花卉部、盆栽部、造園部、食品科学部、フレンド・オブ・アニマルズ部(フレアニ部)、植物バイオテクノロジー部、ハト部、バラ園プロジェクト
- その他:吹奏楽部、マンガイラスト部、軽音楽部、茶道部、写真部、演劇部、昆虫部、DIY同好会
特色ある活動
- 学校農業クラブ活動:農業に関する知識や技術を磨く全国組織の活動で、プロジェクト学習を通して科学性・社会性・指導性を高める
- バラ園プロジェクト:校内バラ園の管理や一般公開時の案内、自由が丘駅前のバラ花壇の管理など
- 盆栽部の活動:徳川家光公遺愛の五葉松の管理や、明治神宮への懸崖菊奉納、六義園への展示など
- ボランティア活動:「深沢・等々力クリーン作戦」など地域貢献活動
- 農業クラブ全国大会への参加:意見発表や技術競技などに参加
都立園芸高校の施設と環境
主な施設
- 各学科の専門実習棟(園芸科実習棟、食品科実習棟、動物科実習棟)
- 特別棟・視聴覚ホール
- 体育館・グラウンド
- 図書館
- コンピューター室
特色ある施設・環境
- イチョウ並木:正門から本館までの100メートルもあるイチョウ並木(1912年頃植樹)
- 徳川家光遺愛の松:盆栽棟に鎮座する日本最古の盆栽の一つ、樹齢500年を超える五葉松
- ハナミズキ:1916年に米国から贈られた原木や、キャロライン・ケネディ元駐日米国大使お手植えのハナミズキなど
- バラ園:約200種類のバラが栽培されている校内バラ園
- 日本庭園:創立60周年記念事業として造営された本格的な日本庭園
- 西洋庭園:フランス整形式庭園とイギリス風景式庭園
- 百年の庭:創立100周年を記念して造られた庭園
- 校外施設:
玉川果樹園(東京都世田谷区玉堤):梨や桃などの果樹栽培
下田農場(静岡県下田市須崎):柑橘類の果樹や熱帯植物
都立園芸高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
- V模擬(60%合格):園芸(37)、食品(39)、動物(45)
- 進研ゼミ偏差値(B判定):園芸(39以下)、食品(39以下)、動物(40~44)
- みんなの高校情報:園芸(43)、食品(46)、動物(47)
各情報サイトによると、都立園芸高校の偏差値は上記のようになっています。ただし、専門高校としての特色があり、単純な偏差値だけでは測れない魅力があります。
入試倍率推移
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
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2025年 | 園芸:1.03倍 食品:1.17倍 動物:2.17倍 | 園芸:2.43倍 食品:2.60倍 動物:3.60倍 | 園芸:1.08倍 食品:1.36倍 動物:2.52倍 | 園芸:1.12倍 食品:1.32倍 動物:2.52倍 | 園芸:1.04倍 食品:1.28倍 動物:2.48倍 | 園芸:1.02倍 食品:1.23倍 動物:2.38倍 |
2024年 | 園芸:0.96倍 食品:1.26倍 動物:1.86倍 | 園芸:2.00倍 食品:2.60倍 動物:4.20倍 | 園芸:1.04倍 食品:1.40倍 動物:2.08倍 | 園芸:1.06倍 食品:1.40倍 動物:2.08倍 | 園芸:1.00倍 食品:1.32倍 動物:2.00倍 | 園芸:0.96倍 食品:1.27倍 動物:1.92倍 |
2023年 | 園芸:1.11倍 食品:1.03倍 動物:2.14倍 | 園芸:1.71倍 食品:2.40倍 動物:4.00倍 | 園芸:0.88倍 食品:1.20倍 動物:2.12倍 | 園芸:0.94倍 食品:1.20倍 動物:2.08倍 | 園芸:0.94倍 食品:1.12倍 動物:2.08倍 | 園芸:0.90倍 食品:1.08倍 動物:2.00倍 |
学科別の特徴
- 園芸科:倍率は比較的安定しており、一般入試の合格倍率は0.90〜1.02倍と、ほぼ1倍前後で推移しています。
- 食品科:園芸科よりやや高めの倍率で、一般入試の合格倍率は1.08〜1.27倍を維持しています。
- 動物科:3学科中で最も高い倍率を示し、一般入試の合格倍率は2.00〜2.38倍と高い競争率となっています。特に推薦入試では3.60〜4.20倍と非常に高い人気を示しています。
年度別傾向
- 2023年から2025年にかけて、全体的に倍率が微増傾向にあります。
- 特に動物科は人気が高まっており、2024年から2025年にかけて一般入試の合格倍率が1.92倍から2.38倍へと上昇しています。
- 食品科も安定した人気を維持し、2025年は合格倍率1.23倍となっています。
入試方法別の特徴
- 推薦入試:どの学科も一般入試より高い倍率を示し、特に動物科は3.60〜4.20倍と極めて高い競争率です。
- 一般入試:受検から合格までの過程で倍率が若干下がる傾向がありますが、動物科は最終的にも2倍以上の高い競争率を維持しています。
この入試倍率データから、都立園芸高校、特に動物科は専門高校としての特色が高く評価され、安定した人気を誇っていることがわかります。
都心の緑豊かな学園で育む専門性と多様な進路の可能性
東京都立園芸高等学校は、116年の歴史と伝統を持つ日本初の園芸学校として、農業・園芸教育の中心的役割を果たしてきました。世田谷区深沢という都会の中に、東京ドーム2.3個分という広大な敷地を有し、その約7割を庭園や圃場が占める緑豊かな環境は、他に類を見ない教育環境です。
「緑と食と命の学園」をコンセプトに、園芸科・食品科・動物科の3学科体制で専門教育を行い、一人ひとりの進路実現をサポートしています。特徴的なのは、専門高校でありながら約83%という高い進学率と、学科の専門性を活かした就職先への就職が実現していることです。
豊富な実習施設と歴史的価値のある教育財産(徳川家光遺愛の盆栽、百年ハナミズキなど)、様々な農業関連の部活動、バラ園公開や園芸展などの特色ある行事も魅力の一つです。
「勤勉、勤労」を校是とし、前向きで労をいとわない精神を育む教育は、これからの社会で求められる人材育成に貢献しています。専門性と普通教育のバランスが取れた教育環境で、生徒一人ひとりが自分の可能性を広げられる学校と言えるでしょう。
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