上野高校は大正13年(1924年)に第二東京市立中学校として開校した、今年度創立100周年を迎える伝統校です。上野公園の端に位置し、東京芸術大学や国立博物館などに囲まれた文教地区にあります。「自主協調」「叡智健康」の校訓のもと、高い学力と豊かな人間性を併せ持つ人材の育成を目指しています。
近年、都立進学校として大きく注目を集めており、令和5年度(2023年度)からは東京都教育委員会より「進学指導推進校」に指定されました。国公立大学や早慶上理などの難関私立大学への合格実績も着実に向上し、「地域・東京を代表する進学校」「名門校の復活」を目標に掲げています。
上野公園という恵まれた環境の中で、学問だけでなく文化・芸術にも触れながら学べる都立高校の中でも特色ある学校です。
都立上野高校の歴史と伝統
上野高校は、関東大震災後の学校不足解消のために1924年(大正13年)に旧東京市が第二東京市立中学校として開校しました。創立者である初代校長の高藤太一郎は大正デモクラシーの精神を汲んで「自主協調」「叡智健康」の校訓を定め、今日まで受け継がれています。
旧制中学時代は一高の合格者数でほぼ連年全国TOP20位入りするなど、進学校として揺るぎない地位を築いていました。新制高校になってからも1960年代までは東京大学合格者を30~40名前後輩出し、都立トップ校の一つとして知られていました。
学生運動や学校群制度の影響を経て一時期進学実績が低下しましたが、2003年に文部科学省より学力向上フロンティア・ハイスクールに指定され、2004年には東京都教育委員会から重点支援校に指定されるなど、かつての名門校復活に向けた取り組みが重ねられてきました。
2014年に進学アドバンス校に指定され、2023年からは「進学指導推進校」として、さらなる進学実績の向上を目指しています。また2024年10月に創立100周年記念式典を東京文化会館において実施しました。
都立上野高校の立地と最寄り駅、周辺環境
上野高校は東京都台東区上野公園10-14に位置し、上野公園の端、東京芸術大学と上野動物園に接しています。また、東京大学本郷キャンパスからも徒歩圏内という、文教地区の中心に立地しています。
最寄り駅からのアクセス
- 東京メトロ千代田線・根津駅より徒歩6分
- JR山手線/京浜東北線・上野駅公園改札より徒歩13分
- 東京メトロ銀座線/日比谷線・上野駅より徒歩13分
- JR線/京成線/舎人ライナー・日暮里駅より徒歩13分
- 京成線・京成上野駅より徒歩13分
周辺環境
上野高校の周辺には多くの文化施設が集まっています:
- 国立科学博物館
- 東京国立博物館
- 国立西洋美術館
- 東京都美術館
- 国際子ども図書館
- 東京文化会館
- 東京大学
- 東京芸術大学
これらの施設を活用した教育活動も積極的に行われており、「本物に触れること」を大切にした教育が実践されています。
都立上野高校の校風と教育方針
校訓
- 自主協調:「己を持するや自主、他と共にするや協調」の精神に基づき、個性の伸長と互いに協力し合う態度を育成します。
- 叡智健康:高い知性と豊かな情操を養い、心身ともに健康な人間の育成を目指します。
教育目標
「自主協調」「叡智健康」の校訓のもと、「学力」「進学実績」「人間性」の三つの向上を目指しています。特に「地域・東京を代表する進学校」「名門校の復活」を目標に掲げ、社会を牽引するリーダーの育成に力を入れています。
特色ある教育活動
- 進学指導推進校:国公立大学等への進学に対応した教育課程の編成、個別面談や進路ガイダンスの定期的実施、充実した補習・講習などにより、確かな学力と高い進学実績の獲得を目指しています。
- 英語教育研究推進校:英語の4技能5領域を伸ばすための多読活動、JET(外国人講師)によるTT授業、オンライン英会話、外部試験の受験などを通じて、グローバル社会で活躍できる人材の育成を行っています。
- 海外学校間交流推進校:国際社会で活躍する新しい時代のリーダーにふさわしい豊かな教養と人間性を育成します。
独自の校風
上野高校には生徒会がなく、東叡祭(文化祭)や運動会などの学校行事は「有志」の生徒が実行委員会を組織して運営します。これは1969年の学園紛争以来の伝統で、生徒の自主性を重んじる校風を象徴しています。「自主協調」の精神のもと、生徒たちは自ら考え、協力し合いながら学校生活を創り上げています。
都立上野高校の大学合格実績と進路指導
合格者総数の推移
上野高校の大学合格実績は年々向上しており、特に令和2年度(2020年度)以降は国公立大学合格者が安定して40名前後を維持し、難関私立大学への合格者数も増加しています。
現役生の合格者数推移(平成27年~令和5年)
- 国公立大学: 13人→16人→23人→34人→21人→39人→37人→50人→42人
- 早慶上理: 23人→18人→15人→29人→36人→39人→30人→41人→43人
- GMARCH: 72人→75人→101人→114人→123人→114人→195人→220人→228人
国公立大学合格実績
令和5年度(2023年度)の国公立大学合格者内訳(現役生42名)は下記のとおりです。
国公立大学分類別合格者数
大学群分類 | 主な大学(合格者数) | 合格者数 | 割合 |
---|---|---|---|
東京一科(東大・京大・一橋・東工大) | 東京工業大学(1名) | 1名 | 2.4% |
旧帝大 | 九州大学(1名) | 1名 | 2.4% |
TOCKY | 筑波大学(3名)、お茶の水女子大学(1名)、千葉大学(2名) | 6名 | 14.3% |
その他関東国公立 | 東京外国語大学(5名)、東京医科歯科大学(1名)、電気通信大学(3名)、東京都立大学(2名)、埼玉大学(2名)など | 22名 | 52.4% |
その他地方国公立 | 会津大学、山梨大学、名古屋市立大学など | 7名 | 16.7% |
専門職大学校 | 防衛大学校(2名)、海上保安大学校(1名) | 3名 | 7.1% |
特に東京外国語大学や筑波大学、電気通信大学などの首都圏国公立大学に強みがあり、医療系や理系の難関校にも合格者を出しています。
私立大学合格実績
令和5年度(2023年度)の私立大学合格者内訳(現役生)は下記のようになっています。
私立大学分類別合格者数
大学群分類 | 主な大学(合格者数) | 合格者数 | 割合 |
---|---|---|---|
早慶上理ICU | 早稲田大学(15名)、慶應義塾大学(4名)、上智大学(15名)、東京理科大学(8名)、国際基督教大学(1名) | 43名 | 4.1% |
GMARCH | 学習院大学(15名)、明治大学(51名)、青山学院大学(28名)、立教大学(24名)、中央大学(28名)、法政大学(82名) | 228名 | 22.0% |
成成明武国獨 | 成城大学(12名)、成蹊大学(12名)、明治学院大学(15名)、武蔵大学(17名)、國學院大学(21名)、獨協大学(28名) | 105名 | 10.1% |
日東駒専 | 日本大学(60名)、東洋大学(117名)、駒澤大学(37名)、専修大学(39名) | 253名 | 24.4% |
東京理工系+東農大 | 東京電機大学(17名)、東京農業大学(22名)、芝浦工業大学(6名)、東京都市大学(4名) | 49名 | 4.7% |
その他私立大学 | 北里大学、星薬科大学、関西学院大学など | 359名 | 34.7% |
特に法政大学(82名)と東洋大学(117名)への合格者が多く、明治大学(51名)や立教大学(24名)への実績も顕著です。
進路指導の特徴と傾向
- 体系的な進路指導: 1年次からのキャリア教育、大学訪問、進路ガイダンス、模擬講座など、3年間を見通した系統的な指導を行っています。
- 充実した自習環境: 180席規模の自習室を平日は午後7時まで開放し、卒業生のチューターが質問に対応するなど、自主学習をサポートしています。
- 特色ある進路行事:東大訪問: 東京大学の先生によるテーマ別講義
- 勉強マラソン: 1日10時間の集中学習(冬期休業中に3日間実施)
- フロンティア講座: 各界で活躍する卒業生による講演会
- 志望校別指導: 国公立大学や私立大学の志望に合わせた個別指導と補習・講習の実施
- 英語教育の強化: JETの複数配置やオンライン英会話、多読活動などによる英語力向上
近年の特徴的な傾向として、国公立大学合格者数が安定して40名前後を維持し、早慶上理への合格者も増加していることが挙げられます。特にGMARCH合格者数が平成29年度から令和5年度までの間に倍以上に増加するなど、中堅から上位の私立大学への進学実績が大きく向上しています。

都立上野高校のイベント・学校行事
上野高校では年間を通じて様々な行事が行われ、多くは有志の生徒たちによって運営されています。校訓「自主協調」の精神を体現する、生徒主体の行事が特徴です。
主な年間行事
- 4月: 入学式、生徒集会、校外学習
- 5月: 運動会(学年ごとの競技や全校リレーなど)
- 6月: 芸術鑑賞教室(近隣の文化施設を活用)
- 7月: 夏期講習、部活動合宿
- 9月: 東叡祭(文化祭)
- 10月: 大学模擬講座(2年生)
- 11月: 修学旅行(2年生)、フロンティア講座(1年生)
- 12月: 不忍駅伝、勉強マラソン(1日10時間の学習)
- 1月: 百人一首大会(1年生)
- 3月: 球技大会、合格体験発表会、卒業式
特色ある行事
- 東叡祭(文化祭): 有志の生徒が運営する文化祭。クラス・サークル単位の展示や発表、部活動の成果発表などが行われます。
- 不忍駅伝: 昭和48年から続く伝統行事。不忍池周辺を走る駅伝競走です。
- フロンティア講座: 各界で活躍する卒業生を招いての講演会。キャリア教育の一環として実施されています。
- 勉強マラソン: 冬期休業中に3日間実施される集中学習。1日10時間の学習に取り組みます。
都立上野高校の部活動や課外活動
上野高校には多彩な部活動があり、文化部・運動部ともに活発に活動しています。令和7年度入試においては、男子バレーボール部で文化・スポーツ等特別推薦入試が行われています。
運動部(17団体)
- 男子バレーボール部: 関東大会に通算10回出場(令和5年には3年連続出場)の強豪。※スポーツ推薦枠3名あり。
- 軟式野球部: 令和5年度高等学校軟式野球東京都予選で第3位。昭和25年の第5回国民体育大会では優勝の実績も。
- 陸上競技部、ハンドボール部、バスケットボール部、サッカー部など多数の運動部が活動。
文化部(15団体)
- 文芸部: 令和4年から3年連続で東京都代表として全国高等学校総合文化祭に参加。
- 美術部: 中央展東京都教育委員会賞(最優秀賞)受賞(平成24年・29年・令和3年)、全国総合文化祭出品実績あり。
- 吹奏楽部、演劇部、茶道部、天文地学部なども活発に活動。
特色ある活動
- 英会話サロン: JET(外国人講師)による放課後の英会話活動
- 上野学: 「文化の杜」上野の文化施設を巡り、関心のあるテーマを探究する活動
- 校外活動: 東京イングリッシュ・エンパワーメント・プロジェクト(TEEP)や東京グローバル・ゲートウェイ(TGG)での英語研修など
都立上野高校の施設と環境
上野高校の施設は、本棟、別棟、体育館棟、グラウンドからなり、充実した学習環境が整っています。
主な施設
- 本棟: 地上5階、地下1階(傾斜地にあるため実際は半地下)、教室や特別教室など
- 別棟: 自習室(180人まで収容、平日19時まで利用可)、図書館、視聴覚室(320人まで収容)など
- 体育館棟: 体育館、トレーニングルームなど
- グラウンド: 2面(第一グラウンドと第二グラウンド、歩道橋で連結)
- プール: 本棟屋上に設置
特色ある施設・環境
- 大銀杏: 樹齢400年を超える銀杏の大木が校内にあり、学校のシンボルとなっています。
- 自習室: 平日は午後7時まで開放され、卒業生のチューターが質問に対応。大学の過去問題集も充実。
- TEEP ROOM: 英語学習のための専用スペース。
- 上ノ原山荘: 長野県東御市にある校外施設。部活動合宿などで利用されています。
都立上野高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
- みんなの高校情報:61(東京121位、都立28位)
- 市進教育グループ(80%合格基準):60(都立24位)
- V模擬(60%合格基準):56(東京153位、都立28位)
上野高校は都立高校の中では中堅上位に位置し、近年は人気・難易度ともに上昇傾向にあります。一般的な偏差値情報サイトによれば、概ね60前後とされています。国公立大学や早慶上理などの難関大学への合格実績が増加していることからも、学力の高い生徒が増えていることがうかがえます。
入試倍率推移
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2025年 | 1.81倍 | 3.11倍 | 2.02倍 | 1.91倍 | 1.79倍 | 1.75倍 |
2024年 | 1.66倍 | 2.61倍 | 2.02倍 | 1.95倍 | 1.79倍 | 1.77倍 |
2023年 | 1.61倍 | 2.84倍 | 1.85倍 | 1.85倍 | 1.69倍 | 1.67倍 |
「近年では都立高の中でも高倍率となることが多くなってきた」とあるように、人気が高まっています。男女合同定員化や私立高校の授業料の実質無償化の影響を受けることなく、令和7年度(2025年度)入試では受検倍率が1.79倍となっています。
進学アドバンス校から進学指導推進校への指定など、進学校としての評価が高まるにつれて、入試倍率も上昇傾向にあります。
文化の杜・上野で学ぶ、100年の伝統と未来を拓く進学校
都立上野高校は創立100周年を迎えた、歴史と伝統ある都立高校です。上野公園内という恵まれた立地環境に加え、「自主協調」「叡智健康」の校訓のもと、自律的な学校生活と確かな学力を育む教育が展開されています。
近年は進学指導推進校として、国公立大学や難関私立大学への合格実績が着実に向上しており、特に令和3年度以降はGMARCH合格者数が大幅に増加するなど、進学校としての地位を確立しつつあります。令和5年度(2023年度)には、現役生だけで国公立大学に42名、早慶上理に43名、GMARCHに228名の合格者を出しており、都立高校としては優れた進学実績を誇ります。
「有志」による行事運営や多彩な部活動など、生徒の自主性を重視した教育活動も上野高校の大きな特徴です。文化・芸術施設が集まる上野の地の利を活かした「上野学」や、充実した英語教育など、グローバル社会で活躍できる人材育成にも力を入れています。
「地域・東京を代表する進学校」「名門校の復活」を目指す上野高校は、大学進学を希望する生徒にとって、充実した学校生活と確かな進路実現が期待できる学校といえるでしょう。