都立南多摩中等教育学校は、東京都八王子市にある都立の完全中高一貫校です。その歴史は、1908年(明治41年)に「東京府立第四高等女学校」として開校したことに始まり、117年の伝統を誇ります。1950年に「東京都立南多摩高等学校」と改称し、2010年に中等教育学校に改編されました。
完全中高一貫校のため、高校からの生徒募集は行っていません。 1年生(中学1年生相当)から6年生(高校3年生相当)までの160名が、6年間一貫教育のもとで学びを深めていきます。
「人間力の南多摩―心・知・体の調和―」を教育理念とし、学力・突破力・協働力・探究力の4つの力を育成。南多摩中等教育学校最大の特色である「フィールドワーク活動」では、1年生の地域調査から始まり、2年生で「モノ語り」、3年生で科学的検証活動、4・5年生では個人で4000字の論文を執筆するなど、6年間かけて段階的に探究力を磨きます。
文部科学省「DXハイスクール」指定校として、プログラミングやAIを活用した授業を展開。また、「Global Education Network20」や「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)」にも指定され、国際理解教育にも力を入れています。
2025年3月卒業生は、東京大学4名、国公立大学に58名(合格率36.3%)、早慶に41名が合格するなど、研究開発型大学への進学を目指す教育で着実な成果を上げています。
この記事では、都立南多摩中等教育学校の偏差値や倍率、進学実績、部活動、校風など、受験を検討される皆様に役立つ情報を詳しくご紹介します。
都立南多摩中等教育学校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
都立南多摩中等教育学校の入学難易度(偏差値)は、各模試で以下のように示されています。
- 首都圏模試センター:65
- 日能研(R4:80%水準):61
- 四谷大塚(Aライン80):59
首都圏模試センターでは偏差値65と、都立中高一貫校10校の中でも上位に位置する難関校です。117年の伝統とフィールドワーク活動を中心とした独自の教育で、高い人気を誇っています。
都立中高一貫校の適性検査について
都立中高一貫校の入試は、入学者決定にあたって学力検査は行わず、各校の特色、育てたい生徒像などに照らし合わせた”適性検査”という形式であり、同偏差値帯の難関私立中学受験とは性質が異なる点に注意が必要です。
南多摩中等教育学校では、以下のような2つの検査を実施しています。
- 適性検査Ⅰ(独自問題):与えられた文章等を的確に分析・考察するとともに、課題に対する考えや意見を明確かつ論理的に表現する力をみる。
- 適性検査Ⅱ(共同作成問題):資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力をみる。
私立中学受験の偏差値とは単純比較できないため、都立中高一貫校に特化した模試を受験し、適性検査形式に慣れることが重要です。また適性検査だけではなく調査書の内容とともに複合的に合否判定がなされるため、上記偏差値は参考値として捉える必要があります
入試倍率
都立南多摩中等教育学校の過去10年間の入試倍率の推移は以下の通りです。
【全体】入試倍率の推移(過去10年間)
年度 | 応募倍率 | 受検倍率 | 受検辞退率 | 入学辞退率 |
---|---|---|---|---|
2016年度 | 5.59倍 | 5.48倍 | 2.0% | 3.8% |
2017年度 | 4.92倍 | 4.83倍 | 1.9% | 1.9% |
2018年度 | 5.26倍 | 5.19倍 | 1.3% | 2.5% |
2019年度 | 5.68倍 | 5.54倍 | 2.4% | 1.3% |
2020年度 | 5.39倍 | 5.33倍 | 1.3% | 1.9% |
2021年度 | 5.06倍 | 4.94倍 | 2.5% | 1.3% |
2022年度 | 4.24倍 | 4.14倍 | 2.4% | 3.8% |
2023年度 | 4.14倍 | 4.04倍 | 2.3% | 3.8% |
2024年度 | 3.73倍 | 3.67倍 | 1.5% | 3.8% |
2025年度 | 3.74倍 | 3.66倍 | 2.2% | 2.5% |

※2025年度から男女合同定員となりました
参考:【男子】入試倍率の推移(過去5年間)
年度 | 応募倍率 | 受検倍率 | 受検辞退率 | 入学辞退率 |
---|---|---|---|---|
2020年度 | 5.00倍 | 4.93倍 | 1.5% | 2.5% |
2021年度 | 4.68倍 | 4.60倍 | 1.6% | 1.3% |
2022年度 | 4.14倍 | 4.01倍 | 3.0% | 6.3% |
2023年度 | 3.85倍 | 3.79倍 | 1.6% | 2.5% |
2024年度 | 3.54倍 | 3.46倍 | 2.1% | 3.8% |

参考:【女子】入試倍率の推移(過去5年間)
年度 | 応募倍率 | 受検倍率 | 受検辞退率 | 入学辞退率 |
---|---|---|---|---|
2020年度 | 5.79倍 | 5.73倍 | 1.1% | 1.3% |
2021年度 | 5.45倍 | 5.28倍 | 3.2% | 1.3% |
2022年度 | 4.35倍 | 4.28倍 | 1.7% | 1.3% |
2023年度 | 4.43倍 | 4.30倍 | 2.8% | 5.0% |
2024年度 | 3.91倍 | 3.88倍 | 1.0% | 3.8% |

倍率の推移から見えること
- 2016~2020年度は高倍率:受検倍率5.3~5.5倍台と高い人気を維持
- 2021年度以降は緩やかに低下:受検倍率が5倍台→4倍台→3倍台と推移
- 2025年度は3.66倍:過去10年間で最も低い倍率となりましたが、依然として狭き門
- 女子の倍率が男子より高い傾向:2020~2024年度まで、一貫して女子の倍率が男子を上回っていました
- 受検辞退率・入学辞退率が低い:都立中高一貫校10校平均と比べて辞退率が低く、第一志望として受験する家庭が多い
都立中高一貫校全体(10校平均)との比較
年度 | 南多摩(受検倍率) | 10校平均(受検倍率) |
---|---|---|
2020年度 | 5.33倍 | 5.47倍 |
2021年度 | 4.94倍 | 4.87倍 |
2022年度 | 4.14倍 | 4.40倍 |
2023年度 | 4.04倍 | 4.22倍 |
2024年度 | 3.67倍 | 3.82倍 |
2025年度 | 3.66倍 | 3.41倍 |
南多摩は都立中高一貫校全体の平均とほぼ同水準で推移しており、安定した人気を保っています。
入学辞退率について
南多摩の入学辞退率は2.5%(2025年度)と、都立中高一貫校の中では非常に低い水準です。これは、南多摩中等教育学校を第一志望として受験する家庭が多いことを示しています。
都立南多摩中等教育学校の歴史と伝統
横川楳子が築いた礎
都立南多摩中等教育学校の前身は、1908年(明治41年)に設立された「東京府立第四高等女学校」です。117年の歴史を持つ伝統校です。
この女学校設立にあたり、以前より八王子にて八王子女学校を運営していた横川楳子は、八王子女学校の資産のすべてと在校生を新設の高等女学校に寄付・移管し、東京府立第四高等女学校創立の礎を築きました。
その功績を記念し、敷地内には横川楳子の胸像が設置されています。
主な沿革
東京府立第四高等女学校時代(1908年~1948年)
- 1908年(明治41年):東京府立第四高等女学校として開校、初代校長 長尾松三郎着任
- 1920年(大正9年):昭和天皇陛下(当時皇太子)が本校に臨幸
- 1945年(昭和20年)8月2日:未明空襲により校舎全焼
- 1946年(昭和21年)3月1日:昭和天皇陛下が三多摩地区御視察の際、本校に臨幸、激励のお言葉を賜る
- 1946年(昭和21年):空襲で焼け焦げたオオクスノキが若芽を芽吹かせる
- 1946年(昭和21年)6月15日:第1期校舎落成
東京都立第四女子新制高等学校時代(1948年~1950年)
- 1948年(昭和23年):東京都立第四女子新制高等学校と改称し、新制中学を併設
- 1949年(昭和24年):男女共学実施
東京都立南多摩高等学校時代(1950年~2015年)
- 1950年(昭和25年):東京都立南多摩高等学校と改称
- 1958年(昭和33年):創立50周年記念式典挙行
- 1982年(昭和57年):海外帰国生徒学級開設
- 2008年(平成20年)10月11日:創立100周年記念式典挙行
- 2010年(平成22年)3月31日:定時制課程閉課程
- 2015年(平成27年)3月31日:東京都立南多摩高等学校閉校
東京都立南多摩中等教育学校時代(2010年~)
- 2008年(平成20年)4月1日:八王子地区中高一貫6年制学校開設準備室設置
- 2009年(平成21年)10月2日:東京都立南多摩中等教育学校設置認可
- 2010年(平成22年)4月1日:東京都立南多摩中等教育学校開校、初代校長 小林幹彦着任
- 2010年(平成22年)11月6日:開校記念式典挙行
- 2019年(令和元年)10月31日:創立10周年記念式典挙行(中等教育学校として)
- 2025年(令和7年)4月1日:第4代校長 富川麗子着任
シンボルに込められた精神
オオクスノキ:再生と希望の象徴
校舎の正門前にある樹齢100年を超すオオクスノキの大木は、昭和20年(1945年)の空襲で焼け焦げながらも、翌年には若芽を芽吹かせ復活を遂げました。
「いかなる困難の中でも、再び立ち上がり未来へ歩む力」を体現する象徴として、今も校庭で生徒たちを見守り続けています。
オオルリ:世界に羽ばたく人材
南多摩中等教育学校のシンボルマークである「オオルリ」は、透き通る歌声で知られる鳥ですが、それと同時に「世界に羽ばたく」というイメージが込められています。また、その背景を囲む三角形は、「心・知・体の調和」を象徴するものです。
校章:女子教育の伝統と八王子の象徴
校章は、明治41年開校の母体校である東京府立第四高等女学校の校章を引き継いでいます。
- 外周の図柄:三種の神器の一つである八咫鏡(やたのかがみ)を意味し、母体校が女子教育を行う学校であったことを示す
- 内部の図案:桑の葉と南多摩という文字を組み合わせており、養蚕業、生糸の生産が盛んな土地柄である「桑の都八王子」を表現
都立南多摩中等教育学校の立地と最寄り駅、周辺環境
所在地とアクセス
所在地 | 東京都八王子市明神町4-20-1 |
アクセス | 京王線 京王八王子駅下車 → 徒歩3分 JR中央線 八王子駅下車 → 徒歩12分 |
京王八王子駅から徒歩3分と、非常にアクセスが良好です。JR中央線の八王子駅からも徒歩12分で通学できます。
周辺環境
都立南多摩中等教育学校は、八王子市明神町の市街地に位置しています。
周辺の特徴
- 交通の便が抜群
- 京王八王子駅から徒歩3分
- JR八王子駅から徒歩12分
- 都心からのアクセスも良好(新宿から約40分)
- 八王子市の文教地区
- 市街地の中心部にありながら、落ち着いた学習環境
- 周辺には商店街や公共施設も充実
- 歴史ある立地
- 1908年から八王子の地で女子教育を担ってきた伝統
- 「桑の都八王子」の象徴として地域に根差した学校
- 自然との調和
- 校舎の正門前には樹齢100年を超すオオクスノキ
- 高尾山など自然豊かな環境も近い
- フィールドワークに最適
- 1年生の地域調査では高尾山を登る班も
- 2年生の職場体験は主に八王子市内の事業所で実施
- 地域との連携が充実
八王子市は東京都の西部に位置し、多摩地域の中心都市として発展してきました。都心へのアクセスも良好で、通学にも便利な立地です。
都立南多摩中等教育学校の校風と教育方針
教育目標
都立南多摩中等教育学校は、「人間力の南多摩―心・知・体の調和―」を教育理念としています。
心を拓く
- 「心」とは、特に人間に顕著な精神作用を総合的にとらえた称
- 「拓く」とは、努力していい状態に変えること
知を極める
- 「知」とは、情勢の変化に応じて的確に判断・処理できる、頭の働き。知恵
- 「極める」とは、それ以上は望めないところまで達すること
体を育む
- 「体」とは、意識・思考・活動をする主体としての肉体
- 「育む」とは、親鳥がひなを羽に包んで育てること
スクールミッション
- 心・知・体のバランスをとれた人間力を育む教養教育を推進し、学力・突破力・協働力・探究力の育成を通じて人間力を育みます
- フィールドワークなど、特色ある教育活動により、6年間を通して”確かな学力”を身に付けます
- 新たな価値を創造し、主体性をもって、国際社会の様々な分野で活躍できるリーダーを育成します
教育課程の特徴
<前期課程(1~3年生)>
各教科の基礎・基本の習得と、意欲的に学習へ臨む姿勢や家庭学習の取り組み方を身に付けることなどを重視します。また、中等教育学校の特長を最大限に生かし、発展的な学習を行うとともに、探究力を培うフィールドワーク活動に関する学習も各教科の中に取り入れ、思考力を高める授業を展開します。
<後期課程(4~6年生)>
前期課程での生徒の理解度を踏まえ、各教科・科目の学習が計画されています。南多摩中等教育学校のこれまでの取組に加え、東京都教育委員会の指定校事業の取組を十分活用し、生徒一人一人が進路実現できるよう授業を展開しています。
特色ある教育活動
都立南多摩の教育には、大きく4つの特色があります。
1. フィールドワーク活動:6年間一貫の探究教育
南多摩最大の特色は、フィールドワーク活動を軸とした6年間一貫の探究教育です。
前期課程(1~3年生):基礎的スキルの習得
- 1年生:地域調査
- 身近な地域に注目し、「不思議」を発見
- 課題発見力の育成
- 高尾山を登る班もあり
- 2年生:モノ語り
- <モノ>を素材とした調査研究
- 職場体験も実施
- 情報収集力と分析力の育成
- 3年生:科学的検証活動
- 科学的な検証活動を実施
- 論理的思考力の育成
- 東京都立大学訪問
後期課程(4~5年生):ライフ・ワーク・プロジェクト
- 個人あるいはグループで課題を設定
- 担当の先生と一緒に時間をかけて4000字の論文を完成
- 「客観性のある論にするにはどうすればよいか」
- 「自論を効果的に伝える方法は何か」
- 批判的思考(Critical Thinking)と創造的思考(Creative Thinking)の育成
成果発表会では、これまでの探究活動の成果を発表します。
2. 教育DX:DXハイスクール指定校
南多摩は、文部科学省「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」指定校です。
- 総合的な探究の時間のグループおよび個人の探究活動を軸としてデジタル人材育成
- PC室・生物室等を情報教育・理数教育・探究活動の拠点と位置づけ
- プログラミングやAIを活用した授業を展開
- デジタルを道具として使いこなす力を育成
独自科目
南多摩中等教育学校独自の科目として、以下の融合科目が設置されています。
- 「データ分析」:情報・技術・数学・理科の融合科目
- 「地球探究」:地理と理科の融合科目
- 「MIE」:英語で数学を学ぶ科目
- 「Pensées」:倫理的、哲学的な課題に対して思考し議論する科目
3. 国際理解教育:Global Education Network20指定校
南多摩は、以下の指定を受け、国際理解教育を推進しています:
WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)
- 高等学校等と国内外の大学、企業、国際機関等が協力
- より高度な学びを提供する仕組み
- 世界で活躍できるイノベーティブなグローバル人材を育成
Global Education Network20(GEN20)
- 東京都教育委員会から指定(3年目)
- 「学問・探究グループ」に所属
- グローバル人材育成のための4つのTARGETを実現

主な国際理解教育プログラム
- 4年生:海外研修旅行(オーストラリア)
- 夏季休業中に実施
- 世界の多様性を肌で感じる
- イタリアのデララッカ高校と姉妹校締結
- 交流活動を充実
- 6年間をかけて使える英語力を計画的に育成
- 英語を活用してグローバルな社会の課題について考える力・行動する力
4. グランドデザイン:4つの力を育成
南多摩は、「人間力」を4つの力として具体化し、それぞれに対応した教育プログラムを展開しています。
【学力】主体的・自立的な学習意欲
- 学びに向かう力、学びを継続する力、学びを生かす力、学びを共有する力
- 基礎学力の重視、先取り学習と発展的内容の学習
- 主体的な学びを引き出す授業、探究型・発表型の授業
- 文理融合型授業の推進
【突破力】目標達成に向けた高い志と逞しさ
- 目標を定め達成に必要な課題を見出せる力
- 目標達成のための計画ができる力、計画を実行できる力
- Career Noteを活用したワーク、Dream Planの作成
- キャリアガイダンス、高大連携、受験支援
【協働力】他者の力を引き出し融合させる能力
- 自己を動かす力、人と親和する力、集団を構成する力、集団を動かす力
- 南魂祭等の異年齢の生徒集団が主体となる学校行事
- 部活動の推進、生徒会活動の活性化
- 規範意識やボランティアマインドの醸成
【探究力】新しい知見を生み出し価値を創造する力
- 課題を設定する力、情報を収集・整理・分析する力
- 論理的に思考する力、発信する力
- フィールドワーク活動、4000字の研究論文
- 高大連携による論文指導、各種フォーラム等への積極的な参加
独自の校風
南多摩の特徴的な校風として、以下のような点が挙げられます。
- 「南魂祭」に象徴される自主性
- 体育祭・合唱祭・文化祭を総称して「南魂祭」
- 生徒が主体となって企画・運営
- 異年齢の生徒集団が協力して作り上げる
- 探究心を重視
- 「何だろう?」と考えることから学びが始まる
- 6年間かけて段階的に探究力を育成
- 自ら課題を発見し、解決する力を養う
- 異学年交流が盛ん
- 1年生から6年生までが共に学び、活動
- 南多摩フィルハーモニーなど前後期合同の部活動
- 南魂祭などの行事を通じて、社会性や人間性を育成
- オオクスノキの精神
- 「失敗を恐れずにまず挑戦することこそが成長の鍵」
- 困難の中でも再生する力を大切に
- 地域との連携
- フィールドワーク活動で地域を学ぶ
- 職場体験は八王子市内の事業所で実施
- 地域に根差した117年の伝統
都立南多摩中等教育学校の進路・進学実績
都立南多摩中等教育学校の2025年3月卒業生は、6年間の一貫教育とフィールドワーク活動の成果として、優れた進学実績を残しました。
【2025年3月卒業生のハイライト】
- 国公立大学合格率36.3%(58名が合格)
- 東京一科+国公立医学部に14名合格(東京大学4名、京都大学3名)
- 早慶に41名合格(早稲田25名、慶應16名)
- GMARCH124名が合格
- 理工系大学への合格者増加(四工大+農61名、過去最多)
進路・合格者の推移
都立南多摩は、過去5年間で国公立大学合格率(入学時定員160名を母数とした場合)が33~44%で安定的に推移しており、約3人に1人が国公立大学に合格する実績を残しています。
特に東京一科医(東京大学・京都大学・一橋大学・東京科学大学+国公立医学部)への合格者は、年度により変動がありますが、2022年に18名、2024年に23名と高水準を記録。2025年は14名と、着実に最難関大学への合格者を輩出しています。
私立大学では、早慶への合格者が年度により変動(26名→54名→25名→71名→43名)していますが、上智・理科・ICUへの合格者は2025年に59名と過去5年間で最多となりました。GMARCHへの合格者も安定しており、理工系大学への志向性の高まりも見られます。
主な大学・短大・専門学校合格実績(2025年3月卒業生)
【国公立大学】58名
- 東京大学:4名
- 京都大学:3名
- 一橋大学:3名
- 東京科学大学:3名
- 国公立医学部医学科:1名
- 旧帝大(東大・京大・医除く):5名
- TOCKY(筑波・お茶の水女子・千葉・神戸・横国):13名
- 関東圏国公立:19名
- その他国公立:7名
【私立大学】
- 早慶:41名(早稲田25名、慶應16名)
- 上智・理科・ICU:59名
- GMARCH:124名
- 成成明学獨國武:31名
- 日東駒専:48名
- 四工大+農:61名
詳しい進学実績の推移や大学別の合格者数については、別記事【2025年】都立南多摩中等教育学校の進路・大学進学実績(国公立・私立)をご覧ください。

進路指導の特徴
都立南多摩では、1年生から6年生までの6年間を3つのステージに分け、「進学プラン」と「キャリアプラン」の両面から体系的な進路指導を実施しています。
【ステージⅠ】1・2年生:基礎力の養成と自己理解
目標:中学校の学習スタイルへの切り替えと進路の方向性
- 6年間を見通した学習目標の設定
- 家庭学習習慣・読書習慣の定着
- 自己理解を深めるワークショップ
- 職業人インタビュー
- 学力推移調査、GTEC
【ステージⅡ】3・4年生:進路の方向性と学問理解
目標:大学・学問分野への理解を深め、進学目標を明確化
- 接続テスト(3年生、8月)
- 東京都立大学訪問(3年生)
- 大学授業体験、分野別大学模擬授業
- Dream Plan作成(Ⅰ~Ⅳ)
- 適性・適職研究
- 実力テスト(7月・11月・2月)
【ステージⅢ】5・6年生:進路実現に向けた実力養成
目標:研究開発型大学に8割の生徒が進学できる力(共通テスト8割以上)
- 大学入学共通テストの得点率向上(5年生:6割以上、6年生:8割以上)
- Dream Plan作成(Ⅴ・Ⅵ)
- 分野別大学模擬授業
- 異文化理解講演会
- 大学入試講座
- キャリア面談
- 志望校検討会
- 各種模擬試験
充実のサポート体制
1. Career NoteとDream Plan
- 各学年でCareer NoteとDream Planを作成
- 段階的に自己理解・学問理解・大学理解を深める
2. 充実した講習
- 夏期講習・冬期講習
- 年間を通じた大学入試講座
3. 模擬試験・実力テスト
- 学力推移調査(年2~3回、前期課程)
- 実力テスト(年3回、4・5年生)
- GTEC(年1回)
- 各種模試(全統、ベネッセ駿台など、後期課程)
4. 高大連携
- 東京都立大学訪問(3年生)
- 分野別大学模擬授業(3・4・5年生)
- 大学等外部機関からの学び
5. キャリア面談・進路検討会
- 5・6年生で定期的に実施
- 進路検討会で生徒一人ひとりをサポート
6. フィールドワーク活動との連携
- フィールドワーク活動で培った探究力を基に進路実現
- ライフワークプロジェクトと連携した「志」の育成
都立南多摩は、「研究開発型大学への進学」を目標に掲げ、6年間のゆとりを成果に転換する計画的な進路指導を実施。フィールドワーク活動で培った探究力を基に、生徒が「自分で決め、自分で納得する」進路実現を支援しています。
都立南多摩中等教育学校のイベント・学校行事
主な年間行事
月 | 行事 |
---|---|
4月 | 始業式、入学式、対面式、課題テスト、生徒総会、宿泊防災訓練(4年) |
5月 | 生徒総会(前期課程)、1学期中間考査、南魂祭(体育祭) |
6月 | 南魂祭(合唱祭) |
7月 | 1学期期末考査、地域調査(1年)、東京探索(2年)、科学調査の日(3年)、終業式、海外研修旅行(オーストラリア)(4年) |
8月 | 始業式、課題テスト、接続テスト(3年) |
9月 | 南魂祭(文化祭)、生徒総会(後期課程) |
10月 | 2学期中間考査、宿泊研修旅行(前期課程) |
11月 | 生徒総会(前期課程)、道徳授業地区公開講座、職場体験(2年)、都立大学訪問(3年)、地域調査(1年)、科学調査の日(3年) |
12月 | 2学期期末考査、終業式 |
1月 | 始業式、課題テスト |
2月 | マラソン大会 |
3月 | 学年末考査、卒業式、成果発表会、修了式 |
特色ある行事
1. 南魂祭(体育祭・合唱祭・文化祭)
南多摩の学校行事の最大の特徴は、「南魂祭」と総称される3つの行事です。
【南魂祭(体育祭)】(5月)
- 全学年が4つの団に分かれて競い合う
- 1年生から6年生までが一緒に参加
- 生徒が主体となって企画・運営
【南魂祭(合唱祭)】(6月)
- 6学年が同じ舞台に立つ
- クラスごとに課題曲と自由曲を披露
- 学年を超えた感動を共有
【南魂祭(文化祭)】(9月)
- 入場門の後ろには、各クラスが作った垂れ幕が並ぶ
- クラス展示、部活動発表など多彩な企画
- 生徒の自主性を最大限に尊重
2. フィールドワーク活動関連行事
【1年生:地域調査】(7月・11月)
- 高尾山を登る班もある
- 身近な地域の「不思議」を発見
【2年生:職場体験】(11月)
- 主に八王子市内の事業所で体験
- 「モノ語り」の一環として実施
【2年生:宿泊研修旅行】(10月)
- 明日香村などを訪問
- 歴史や文化を学ぶ
【3年生:科学調査の日】(7月・11月)
- 科学的検証活動の実践
- 東京都立大学訪問(11月)
【成果発表会】(3月)
- 1年間の探究活動の成果を発表
- 6年間の集大成を披露
3. 海外研修旅行(オーストラリア)(4年、7月)
- 夏季休業中にオーストラリアで研修
- 4年生全員が参加
- 異文化理解を深め、グローバルマインドを育成
4. その他の特色ある行事
- 宿泊防災訓練(4年、4月)
- マラソン大会(2月)
- 生徒総会(年3回、前期・後期別)
- 道徳授業地区公開講座(前期課程、11月)
都立南多摩中等教育学校の部活動や課外活動
運動部
都立南多摩では、運動部・文化部ともに多くの部が活発に活動し、優れた実績を残しています。
前期課程
- 陸上競技部
- 軟式野球部
- サッカー部
- 女子バレーボール部
- 男子バスケットボール部
- 女子バスケットボール部
- 硬式テニス部
- 剣道部
- 薙刀部
- 卓球部
後期課程
- 陸上競技部
- 硬式野球部
- サッカー部
- 女子バレーボール部
- 男子バスケットボール部
- 女子バスケットボール部
- 男子硬式テニス部
- 女子硬式テニス部
- 剣道部
- 薙刀部
- 卓球部
- 水泳部
文化部
前期課程
- 太鼓部
- 合唱部
- 美術部
- 日本文化部
- 科学部
後期課程
- 太鼓部
- 美術部
- イラストクリエイト部
- 日本文化部
- 科学部
- 演劇部
- PC部
前後期合同
- 南多摩フィルハーモニー(1年生から5年生、約100名のオーケストラ)
同好会
- 将棋同好会
- かるた同好会(後期生)
- 防災支援隊
特色ある活動
1. 南多摩フィルハーモニー:前後期合同の大規模オーケストラ
- 1年生から5年生の、総勢約100名のオーケストラ
- 南多摩中等教育学校では珍しい前期生後期生合同の部
- クラシック音楽だけでなく、吹奏楽、ポップス、弦楽合奏、小編成のアンサンブルなど幅広い分野に取り組む
- 全国大会への連続出場を目標に活動
実績:都中・高吹連各賞受賞
2. 太鼓部:八丈島で伝統を学ぶ
- 夏に八丈島にて合宿を実施
- 島の方から太鼓の技術だけでなく、島の生活や文化も学ぶ
- 地域のお祭りや成田太鼓祭り、都大会などに参加
- 年度末には前期生と一緒に定期演奏会(自主公演)
実績:ぎふ総文2024 4位入賞
3. 陸上競技部:都新人優勝、全国大会出場
- 前期・後期ともに活発に活動
- グラウンド、タータン、インターロッキングを使用
実績:
- 東京都新人大会女子やり投 優勝
- 都高等学校総合体育大会出場
- 夏の都大会、全国大会、冬の関東駅伝、全国駅伝の舞台を目指す
4. 硬式テニス部:都ベスト16、関東公立4位
- オールウェザーコート3面を完備
- 前期は男女合わせて42名で活動
実績:
- 東京都 ベスト16
- 関東公立大会 4位
- 都内公立中高一貫校大会 優勝
5. 薙刀部:「凛とした人間」を目指す
- 前期・後期合同で活動
- 「凛とした人間になる」をモットーに日々練習
実績:
- 高校総体・関東大会出場
- 平成28年度は全国選抜大会へ出場
6. 卓球部:八王子新人大会準優勝
- 前期は全員が初心者から始めて力をつける
令和6年度の主な成績
- 八王子新人卓球大会団体 準優勝
- 東京都中学校新人卓球大会 シングルス 8名出場(目標達成)
- 中央大学杯 優勝
- 関東大会・都大会進出
7. 科学部:ぎふ総文東京代表出場
- 前期は約40名で活動
- 物理・化学・生物・地学の班に分かれて活動
- 東京都科学コンテストで優秀賞受賞
実績:ぎふ総文2024 東京代表出場
8. 日本文化部:全国・都大会各賞受賞
- 前期は裏千家の茶道お点前や浴衣の着付けを実施
- 後期は書道を主な活動内容とし、コンクールに挑戦
- 文化祭では書道パフォーマンスにも挑戦
実績:全国・都大会各賞受賞
9. かるた同好会(後期生):ぎふ総文優勝
実績:ぎふ総文2024 優勝
都立南多摩中等教育学校の施設と環境
主な施設
都立南多摩中等教育学校は、西館と東館の2棟に分かれ、多様な設備が備えられています。
教室棟
普通教室
- 西館・東館に前後期6学年分の教室
特別教室
- 化学室
- 物理室
- 生物室
- 美術室
- 食物室
- PC室(情報教育・理数教育・探究活動の拠点)
- 多目的室
- 理科講義室
- 視聴覚室
- 第2小講義室
- 3階特別講義室
その他
- 図書室
- ランチルーム(前期課程給食用)
- 売店(後期課程利用可)
体育施設
体育館
- アリーナ
武道場
- 柔道場
- 剣道場
- トレーニングルーム
屋外施設
- グラウンド(トラック付)
- テニスコート(オールウェザー3面)
- 屋外球技コート
- オープンスペース
音楽・文化施設
- 音楽室
- 小ホール
- 和室(日本文化部使用)
特色ある施設・環境
1. オオクスノキ:再生の象徴
- 正門前に樹齢100年を越すオオクスノキの大木
- 昭和20年の空襲で焼け焦げながらも、翌年若芽を芽吹かせた
- 「再生する力」の象徴として生徒を見守る
2. 横川楳子の胸像
- 敷地内に横川楳子の胸像が設置
- 南多摩中等教育学校創立の礎を築いた功績を記念
3. DXハイスクール対応設備
- PC室を情報教育・理数教育・探究活動の拠点と位置づけ
- 生物室等も探究活動に活用
- プログラミングやAIを活用した授業が展開できる環境
4. 充実した体育施設
- グラウンドにはトラック付き
- テニスコート3面(オールウェザー)
- 柔道場、剣道場を完備
- トレーニングルームで通年練習可能
5. 南多摩フィルハーモニーの練習環境
- 音楽室
- 小ホール
- 普通教室も活用し、約100名が活動
6. 探究活動を支える環境
- 各種実験室(化学・物理・生物・地学)
- 理科講義室
- 図書室
- ICT環境の充実
117年の伝統とフィールドワークで育む人間力、探究型教育の先進校
都立南多摩中等教育学校は、1908年に「東京府立第四高等女学校」として開校した117年の伝統を持つ名門校です。2010年に中等教育学校として新たなスタートを切り、フィールドワーク活動を中心とした探究型教育で、着実な成果を上げています。
都立南多摩の魅力
- 優れた進学実績:国公立合格率36.3%(58名)、東京大学4名、早慶41名
- 6年間一貫のフィールドワーク活動:地域調査→モノ語り→科学的検証→4000字論文
- DXハイスクール指定校:プログラミングやAIを活用した最先端の学び
- 充実した国際理解教育:WWL、GEN20指定校、海外研修旅行(オーストラリア)
- 異年齢交流が盛ん:南魂祭、南多摩フィルハーモニーなど前後期合同の活動
- 全国レベルの部活動:太鼓部4位、かるた同好会優勝(ぎふ総文2024)、テニス部都ベスト16
- オオクスノキの精神:困難の中でも再生する力、失敗を恐れずに挑戦
偏差値・入試倍率
- 偏差値:首都圏模試65、日能研61、四谷大塚59
- 2025年度入試倍率:応募倍率3.74倍、受検倍率3.66倍
- 都立中高一貫校の中でも上位に位置する難関校
- 入学辞退率が低く、第一志望として受験する家庭が多い
立地とアクセス
- 京王八王子駅から徒歩3分
- JR八王子駅から徒歩12分
- 八王子市の中心部に位置
都立南多摩中等教育学校は、「人間力の南多摩―心・知・体の調和―」を教育理念とし、学力・突破力・協働力・探究力の4つの力を育成します。1年生の地域調査から始まり、6年生で4000字の論文を完成させるまで、段階的に深まるフィールドワーク活動は、自ら課題を発見し解決する力を育てます。
また、DXハイスクール指定校として、プログラミングやAIを活用した授業を展開。独自科目「データ分析」「地球探究」「MIE」「Pensées」など、文理融合型の先進的なカリキュラムも魅力です。
南魂祭(体育祭・合唱祭・文化祭)では、異年齢の生徒集団が主体となって企画・運営。南多摩フィルハーモニーのように前後期合同で活動する部活動もあり、1年生から6年生までが協力して成長する環境が整っています。
中学受験を検討されている方は、学校説明会や学校見学会に参加して、実際に南多摩の教育現場を見学されることをおすすめします。117年の伝統と最先端のDX教育が融合した独自のフィールドワーク活動と、「研究開発型大学」を目指す計画的な進路指導が、お子様の将来の可能性を大きく広げてくれるでしょう。
<参照元>
ページ内の大学合格実績やデータは各高校のホームページやパンフレットを参照しています。しかしながら、参照したタイミングによっては速報データであったり、年度をまたぎ変更となっている場合もありますので、正確なデータは各都立高校の最新データをご確認ください。
・都立南多摩中等教育学校公式サイト https://www.metro.ed.jp/minamitama-s/
