東京都立国立高校は、東京都国立市に位置する都立の進学校であり、自由な校風と難関国公立大学合格者を輩出する高い進学実績で知られています。また学業とともに来場者1万人を超える日本一の文化祭と呼ばれる国高祭も有名で、多くの生徒が自主的に学業や行事・部活動に取り組み、幅広い分野で活躍しています。本コラムでは、国立高校魅力を詳しくご紹介します。
都立国立高校の歴史と伝統
東京都立国立高校は1940年(昭和15年)に旧制中学校の東京府立第十九中学校として開校されました。当時は日中戦争による資材不足からの校舎竣工が大きく遅れ、立川高校の前身で合った東京府立第二中学校(立川高校の前身)などの校舎を借りて授業が行われていたこともあったと言われています。
学校群制度時代には、従来学区トップ校であった都立立川高校と72群を組んだことも一因となり、1980年代中頃までは東京大学合格者数が30人を超える年もありました。以来、多摩地域を代表する進学校としての地位を築いています。
また国立高校の生徒たちは、学業だけでなく、部活動や学校行事にも積極的に参加し、人格の成長を重視しています。中でも「国高祭」や「第九演奏会」といった代表的な行事は、生徒が中心となって運営し、豊かな経験を積んでいます。
都立国立高校の立地と最寄り駅
都立国立高校は国立市という文教地区にあり、周辺には国立音楽大学や一橋大学などの教育機関が多く存在します。このため、知的で文化的な雰囲気が漂う地域です。国立市は緑が豊富で、静かで落ち着いた環境が特徴で、学生が学業に集中できる場所として理想的です。
住所 | 東京都国立市東4-25-1 |
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最寄り駅 | ①JR中央線「国立」駅下車 徒歩15分 ②JR南武線「谷保」駅下車 徒歩10分 ③JR中央線「国立」駅より立川バス、京王バス乗車「国立高校前」下車徒歩3分 |
最寄り駅のJR国立駅から学校へ続く大学通りは、桜並木や緑豊かな景観が楽しめる場所となっています。です。この通り沿いにはカフェやレストラン、書店なども点在しており、学業の合間にリフレッシュできる環境があります。また 国立市内には一橋大学やくにたち市民芸術小ホールなど、文化的な施設も多く、学生たちが知的好奇心を刺激される機会が豊富です。
国立高校の最寄り駅である国立駅は、八王子駅から14分、三鷹駅から13分、新宿駅から26分、池袋駅から39分、東京駅から45分、練馬駅から48分と広範囲から通学可能な立地となっています。
都立国立高校の校風と教育方針
東京都立国立高等学校の校風は、自由闊達でありながら、自主自律を大切にするのが大きな特徴です。生徒一人ひとりの個性や自主性を尊重しつつ、知性や社会性を高めるための多様な活動が推奨されています。
国立高校の生徒は、学業だけでなく、学校行事や部活動、生徒会活動にも積極的に取り組み、自由に自分の興味や関心を追求しています。生徒主体で運営される「国高祭」や「第九演奏会」などの行事も、自由な発想と協力を基盤にした活動が求められます。また、部活動や学校行事への参加も奨励されています。硬式野球部が甲子園に出場したこともあるように、運動部や文化部が活発に活動しており、生徒たちは文武両道を実現しています。
このような行事や部活動、生徒会活動を通じて、生徒が主体的に企画・運営する機会が多く、自主性とリーダーシップが育まれます。これにより、生徒は協調性や責任感、問題解決能力を高め、将来の社会においても役立つスキルを身に付けていきます。
自由な学びと自主性を大切にしながら、生徒が自らの成長を追求できる環境が整っていることが特徴となっており、生徒は学業や課外活動においてバランスの取れた学校生活を送り、将来の社会に向けた準備をしっかりと行っています。
都立国立高校の大学合格実績と進路指導
都立国立高校は、東京にとどまらず全国屈指の進学校として国内最難関・難関大学への高い進学実績を誇っています。例年、東京大学や京都大学、一橋大学、東京工業大学などの国公立大学、国公立医学部に多数の合格者を輩出しており、その進学実績から日比谷高校、西高校と並び都立御三家と称されています。
進学実績の向上と「授業を大切にする」方針のもと、生徒の学習を支援するためにさまざまな取り組みを行っています。年間20回にわたる土曜授業を実施し、授業時間を確保することで学習の基盤をしっかりと築き、長期休業中には集中講習を行い、生徒が時間を有効活用して学力向上に努められる環境を整えています。
さらに、平常授業の日にも、朝や昼、放課後に講習や補習が行われており、生徒一人ひとりの理解度に応じたサポートが提供されています。特に、小論文や記述試験の準備においては、個別添削指導が丁寧に行われており、受験対策の強化につながっています。
また、自習室は4月半ばから夜8時まで開放されており、部活動後でも生徒が自習できる環境が整っています。さらに、9月半ばから1月半ばの受験期にかけては、土日も自習室が利用できるように開放日が設けられています。自習室には卒業生が支援員として配置されており、定期考査前には後援会のサポートにより学習支援も提供されています。
加えて、大学や研究機関と連携した「総合的な探究の時間」を活用し、生徒が深い学びを体験し、将来のキャリア形成にも役立つ教育が充実しています。これらの取り組みを通じて、国立高校は学業面だけでなく、キャリア教育においても生徒の成長を支援しています。
都立国立高校の現役生の大学合格実績推移(2020~2024)

国立高校の2020年から2024年までの現役生の大学合格実績をまとめています。大学受験の最難関と言われる東京一工医(東大・京大・一橋大・東京工業大・国公立医学部)に例年例年50人前後現役で合格しています。
また、私立大学についても最難関の早慶医(早稲田・慶應義塾・私立医学部)に、例年100人以上、上智大・東京理科大・GMARCHを合わせると例年400人~500人の現役合格者を出しています。
2024年は日本一の文化祭「国高祭」の一般開放が再開された影響かやや実績は下がっていますが、それでも都内有数の合格実績を誇っています。
都立国立高校の2024年度 難関大学現役合格者数
- 東京一工医(38人):東京大学(11人)、京都大学(3人)、一橋大学(15人)、東京工業大学(3人)、国公立大学医学部(6人)
- 旧帝国大学(20人):北海道大学(8人)、東北大学(7人)、名古屋大学(1人)、大阪大学(1人)、九州大学(3人)
- TOCKY(14人):筑波大学(3人)、お茶の水女子大学(2人)、千葉大学(1人)、神戸大学(0人)、横浜国立大学(8人)
- 早慶上理医(163人):早稲田大学(51人)、慶應義塾大学(41人)、上智大学(40人)、東京理科大学(31人)、私立大学医学部(0人)
- GMARCH(223人):学習院大学(6人)、明治大学(85人)、青山学院大学(37人)、立教大学(13人)、中央大学(60人)、法政大学(22人)
都立国立高校の延べ大学合格人数(現役)に占める各大学合格実績(2024)

受験期である高校3年生の夏休みが、日本一の文化祭「国高祭」の準備に費やされるため、浪人覚悟の受験戦略とまことしやかに言われています。しかしながら、上記グラフを見ると、現役生の延べ合格者数に占める各大学の合格者数の割合は、最難関の東京一工医で全体の約6%、旧帝大+早慶医を加えるとその比率は約24%と、現役合格者の内、約4分の1の学生が日本最難関の大学に合格しています。
また現役合格者のうち、難関大の基準と言われるGMARCH以上に合格している国立高生は81%以上(1学年の5分の4以上)という非常に高い比率を誇っています。

都立国立高校のイベント・学校行事
東京都立国立高等学校では、生徒が主体となる多彩な学校行事が行われています。代表的なイベントには、文化祭や体育祭、後夜祭を含む国高祭があり、各行事で生徒たちは創造力や協力精神を発揮します。また、毎年の第九演奏会では、ベートーベンの交響曲第9番をプロの演奏に合わせてドイツ語で合唱し、音楽的な経験を深めます。
さらに、クラス対抗のスポーツ大会であるクラスマッチや、新入生を歓迎する新入生歓迎会、三年生が参加する修学旅行なども行われ、これらの行事を通じて生徒同士の絆を深め、充実した学校生活を送っています。
月 | イベント |
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4月 | 入学式、修学旅行(三年)、新入生歓迎会、第九演奏会、クラスマッチ、歌舞伎教室、宿泊防災訓練(一年) |
5月 | クラスマッチ |
6月 | ー |
7月 | 歌舞伎教室、部活動合宿 |
8月 | 部活動合宿 |
9月 | 国高祭(文化祭・体育祭・後夜祭) |
10月 | 遠足(一、二年) |
11月 | ー |
12月 | ー |
1月 | ー |
2月 | ー |
3月 | 卒業式 |
都立国立高校の部活動や課外活動
国立高校は部活動や課外活動が非常に活発で、生徒の成長を支える重要な要素となっています。運動部と文化部の両方が充実しており、硬式野球部やサッカー部、吹奏楽部、演劇部など、多様な部活動に多くの生徒が参加しています。特に、硬式野球部は昭和55年に甲子園出場の実績があり、文化部も各種コンクールで成果を上げるなど、幅広い分野で活躍しています。
また、課外活動としては、地域活動やボランティア、さらに東京都の「次世代リーダープログラム」や「グローバルリーダーシッププログラム」など、国際的な活動にも参加の機会が与えられています。理系の生徒は「日本学生科学賞」や「国際科学オリンピック」にも挑戦し、研究や発表の場で実力を発揮しています。
これらの活動を通じて、生徒たちは自主性やリーダーシップ、協力の精神を養い、学業以外でも自己成長の機会を得ています。
都立国立高校の施設と環境
都立国立高校は、広大な敷地と充実した施設が整っています。敷地内には、広々としたグラウンドや体育館、プールなどの運動施設があり、部活動や体育の授業が快適に行われています。また、最新の設備を備えた図書館は、静かな学習環境を提供しており、放課後も多くの生徒が自習や課題に取り組んでいます。
さらに、理科実験室や情報室などの専門教室も完備されており、実践的な学びをサポートする設備が整っています。都立高校には珍しく天文ドームもあります。校内、また学校周辺は緑が多く、四季折々の自然を感じながら学べる環境です。また、JR国立駅に向かう大通りも入学式の頃は桜、晩秋になるとイチョウ並木、そしてクリスマスにはイルミネーションが街並みを彩ります。文教地区ですから遊戯施設や繁華街がなく、学習環境として恵まれています。
都立国立高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
国立高校は、日比谷・西・戸山などと並び、東京都内の公立高校の中でもトップレベルの偏差値を誇ります。その偏差値は各情報サイトを確認すると下記のようになっています。
- みんなの高校情報:73(東京9位、都立1位)
- 市進教育グループ(80%合格基準):68(都立4位)
- V模擬(60%合格基準):67(東京14位、都立3位)
都立高校では日比谷、西・立川(創造理数)に次いで、3番手と非常に高い入試難易度となっています。進学校として全国的にもトップレベルの大学合格実績を出していますので、高校入試時点でも高い学力と内申点が求められます。
入試方式
都立高校ですから、推薦入試と一般入試の2つの入試方式があります。2025年度は昨年度は推薦入試が1月26日(土)と1月27日(日)、一般入試が2月21日(金)になります。
<参考情報>詳細はこちらの東京都教育委員会のサイトを確認ください
都立高校の一般入試では、学力検査点と調査書点の合計(1000点)に英語スピーキングテスト[ESAT-J]の結果(20点)を加えた総合得点(1020点満点)順に選抜されます。面接や実技を実施する学校では、それらの得点も加えた総合成績順に選抜されます。
尚、国立高校は日比谷・西・戸山・青山・立川・八王子東とともに進学指導重点校に指定されています。理社は他の都立高校受験と同じく共通問題となりますが、高い学力を判定するために、英国数の3教科は国立高校独自の問題となっています。
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入試倍率の推移
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
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2025年 | 1.42倍 | 3.44倍 | 1.56倍 | 1.53倍 | 1.42倍 | 1.38倍 |
2024年 | 1.52倍 | 3.55倍 | 1.61倍 | 1.56倍 | 1.43倍 | 1.41倍 |
2023年 | 1.47倍 | 3.32倍 | 1.47倍 | 1.47倍 | 1.35倍 | 1.31倍 |
入試倍率の特徴と傾向
国立高校(都立高校御三家の一つ)の入試倍率は、3年間を通して安定した人気を維持していることがわかります。
倍率の推移を見ると、2023年から2024年にかけて全ての入試区分で倍率が上昇し、2024年から2025年にかけては若干の低下が見られますが、2023年と比較すると全体的に高い水準を維持しています。
推薦入試は3年間を通して最も競争率が高く、常に3倍を超える倍率となっています。2024年に3.55倍のピークを記録した後、2025年は若干低下して3.44倍となっていますが、依然として高い人気を保っています。
一般入試の倍率も2023年の1.47倍から2024年に1.61倍へと上昇し、2025年は1.56倍と若干低下したものの、2023年よりも高い水準を維持しています。
合格倍率の推移(2023年:1.31倍→2024年:1.41倍→2025年:1.38倍)からも、国立高校が都立高校の中でも安定した人気を保ち続けていることが読み取れます。
都立高校御三家としての地位を反映し、他の多くの都立高校と比較しても安定した入試倍率を維持している点が特徴的です。特に推薦入試の高倍率は、同校の教育内容や進学実績への評価の高さを示していると言えるでしょう。
青春(国高祭)と難関大学合格の両方を追い求める、忙しくも充実した高校生活を送れる国立高校
国立高校は学力の高い生徒が多く集まる学校として知られ、伝統的に難関大学への進学実績が豊富であり、東京都内でも屈指の進学校として都内外からも注目されています。また学校の位置する国立市は、学園都市としても知られ、静かで落ち着いた環境の中で学ぶことができる点も魅力の一つです。
学問を深く追求しながらも、生徒の自主性を尊重することに重きを置いていますので、文武両道を奨励しており、学業だけでなく部活動や学校行事にも力を入れています。特に日本一と言われる文化祭や体育祭といった行事は、生徒たちが主体的に運営することで、協力し合いながらリーダーシップを育む機会となっています。
都立高校ですので、私立高校と違い入試の得点が高ければいいだけではなく、中学3年生2学期の内申点も高い水準を求められるでしょう(推薦はほぼオール5、一般でも合格者平均んは9教科40以上と言われる)。それでも、東京一工医・早慶上理医などの国内最難関の大学を目指しながら、学業以外のことにも力を入れたい、日本一の文化祭を体験したいという「あえて二兎を追う」のであれば、国立高校は非常に有力な選択肢となるでしょう。