都立国際高校は、1989年に設立された都立高校唯一の国際学科を持つ高校です。海外からの帰国生徒や在京の外国人生徒が全校生徒の約3割を占め、その出身国は40カ国以上に上ります。2015年には公立高校で初めて国際バカロレア・ディプロマプログラムの認定校となり、国際教育のパイオニアとしての地位を確立してきました。
国際感覚を持つ人材の育成と、難関大学への進学実績の両立を実現している学校として、注目を集めています。最新の2024年度入試では、東京大学や医学部への現役合格を果たすとともに、早慶上理やGMARCHなど難関私立大学への合格者も過去最高水準を記録し、進学校としての評価も年々高まっています。
都立国際高校の歴史と伝統
旧東京教育大学農学部跡地に1989年に創設された都立国際高校は、開校から34年を迎える比較的若い学校です。しかし、国際教育のパイオニアとして、様々な教育改革に積極的に取り組んできました。2007年には英語教育優良学校として文部科学省表彰を受賞し、2013年には進学指導特別推進校に指定されています。2015年には国際バカロレア・ディプロマプログラムの認定を取得し、国際バカロレアコースを新設。2018年には東京外国語大学と高大連携協定を締結するなど、着実に実績を重ねています。
校章はグラフィックデザイナーの與口隆夫氏によってデザインされ、世界の国家、民族をイメージさせる地球をモチーフに、人と人とが手を結び合わせている様子を表現しています。三つの「○」は本校の教育目標を象徴し、異なる国、民族が互いに尊敬し、共に生きる姿勢を表現しています。また、シンボルカラーの「ブルー」は「若さ」「知性」「清潔」「未来」を象徴しています。開校以来「パイオニア精神」を大切にし、世界に開かれた学校として、常に新しい教育の可能性を追求し続けています。
都立国際高校の立地と最寄り駅、周辺環境
都立国際高校は、東京都目黒区駒場二丁目に位置しています。最寄り駅は京王井の頭線駒場東大前駅で徒歩5分、池ノ上駅からは徒歩7分と、通学に便利な立地です。周辺には東京大学駒場キャンパスがあり、文教地区としての落ち着いた雰囲気の中で学ぶことができます。
住所 | 東京都目黒区駒場2-19-59 |
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最寄り駅 | ①京王井の頭線 駒場東大前駅 徒歩5分 ②京王井の頭線 池ノ上駅 徒歩7分 |
都心へのアクセスも良好で、渋谷まで電車で約5分という立地は、放課後の学習活動や部活動にも適しています。学校周辺は閑静な住宅街で、緑も多く、落ち着いて学習に取り組める環境が整っています。また、近隣には図書館や文化施設も充実しており、様々な学習機会に恵まれた環境といえます。
都立国際高校の校風と教育方針
「Keep Learning, Keep Changing, and Keep Smiling」をモットーに掲げ、多様性を重視した教育を行っています。全校生徒の約3割を占める帰国生や在京外国人生徒との日常的な交流を通じて、自然に国際感覚を身につけることができます。
校則は
- 基本的生活習慣を守ること
- 自転車・バイク・自動車による登下校は禁止
- 本校指定の制服を着用すること
- 公共物、学校の施設を大切にすること
の4つのみと、自由な校風が特徴です。
語学教育には特に力を入れており、英語の授業では2クラスを4-5つのレベルに分けた少人数制を採用。最上位レベルではネイティブの教師による英語のみの授業を行っています。また、第二外国語としてドイツ語、スペイン語、フランス語、韓国語、中国語から1つを選択して学ぶことができ、これらの授業もネイティブ教師による少人数制で行われています。
さらに、2年次と3年次では「課題研究」が必修となっており、生徒自身が設定したテーマについて入念な調査研究を行い、本格的な論文を執筆します。このような主体的な学習活動を通じて、考える力や表現力を育成しています。国際理解教育も充実しており、独自科目「国際理解」では文化理解・社会理解・環境表現の3分野について、学校独自のテキストを用いた授業を展開しています。
都立国際高校の大学合格実績と進路指導
都立国際高校は、国際教育と進学実績の両立を実現している進学校として知られています。進学指導特別推進校として指定されており、生徒一人一人の進路希望に応じたきめ細かな指導を行っています。英語圏の大学を目指す生徒のためにSATとTOEFLの準備クラスを設置し、海外大学への進学もサポート。毎年10~20名の生徒が海外大学に進学しています。
英語力の伸長を確認するため、全校生徒が毎年4月にTOEIC L&R IPテストを受験します。また、日本国内出身、英語圏の帰国子女、英語圏以外の帰国子女など、さまざまなバックグラウンドを持つ生徒が集まるため、英語や国語などは習熟度別のクラス分けを行い、それぞれの生徒の実力に合わせた指導を実施しています。
都立国際高校の現役生の大学合格実績推移(2020~2024)

直近5年間でみると、着実に進学実績を向上させています。国公立大学では、2024年度に東京大学や医学部への現役合格を果たし、最難関大学への道を切り開いています。旧帝大(東大・京大除く)への合格者も2024年度は9名と過去最高を記録。私立大学では直近3年間において早慶上理への合格者が115名以上を維持し、特に2022年度は175名という高い実績を残しています。
GMARCHへの合格者数は年々増加傾向にあり、2021年度の96名から2024年度には190名まで伸長。成成明学國武や日東駒専への合格者も着実に増加し、幅広い層での進学実績を築いています。1人あたりの合格数も2021年度の2.3校から2024年度には2.9校まで向上しており、生徒の選択肢が広がっています。
都立国際高校の2024年度 難関大学現役合格者数
- 東京一工医(3人):東京大学(1人)、京都大学(0人)、一橋大学(0人)、東京工業大学(0人)、国公立大学医学部(2人)
- 旧帝国大学(9人):北海道大学(7人)、東北大学(0人)、名古屋大学(0人)、大阪大学(1人)、九州大学(1人)
- TOCKY(1人):筑波大学(0人)、お茶の水女子大学(0人)、千葉大学(1人)、神戸大学(0人)、横浜国立大学(0人)
- 早慶上理医(136人):早稲田大学(40人)、慶應義塾大学(31人)、上智大学(65人)、東京理科大学(0人)、私立大学医学部(0人)
- GMARCH(190人):学習院大学(10人)、明治大学(45人)、青山学院大学(43人)、立教大学(46人)、中央大学(19)、法政大学(27人)
都立国際高校の延べ大学合格人数(現役)に占める各大学合格実績(2024)

2024年度の現役生の合格実績を詳しく見ると、国公立大学では東京一工医に3名、旧帝大(東大・京大除く)に9名、関東圏国公立に12名が合格。私立大学では早慶上理に71名、上智・東京理科大に65名、GMARCHに190名が合格するなど、充実した実績を残しています。
特に私立大学では、GMARCHが全体の26.3%を占め、早慶が9.8%、上智・東京理科大が9.0%と、難関私大への合格者が多いのが特徴です。また、成成明学國武への52名(7.2%)、日東駒専への86名(11.9%)など、幅広い層での合格実績も見られます。さらに、海外大学への合格者は100名越えの約15%(IBコースの生徒が多め)を占めており、多様な進路選択を実現しています。

都立国際高校のイベント・学校行事
都立国際高校の二大行事は、5月に開催される体育祭と9月の文化祭(桜陽祭)です。体育祭では全校生徒が赤・白・青の3つの団に分かれ、競技や応援で総合優勝を目指して熱戦を繰り広げます。
桜陽祭は毎年9月中旬の土日に開催され、学校最大の行事として位置づけられています。クラス・部活動・委員会・有志が総力を挙げて様々な出し物を企画し、5月中旬から準備を始め、夏休みの大半を費やして作り上げていきます。2024年度の桜陽祭は5年ぶりに飲食企画が復活し、スローガン「桜花再咲(おうかさいき)」のもと、コロナ前の華やかさを取り戻しつつあります。
また、国際色豊かな行事も特徴的です。1年生は夏に2泊3日のESCA(English Summer Camp)に参加し、英語でのディスカッションやグループプレゼンテーションを行います。学年の絆を深めながら英語力を伸ばす貴重な機会となっています。さらに、学年ごとのスピーチコンテストも開催され、英語だけでなく他言語でのスピーチも披露されます。
月 | イベント |
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4月 | 入学式/始業式/TOEIC/新入生 オリエンテーション |
5月 | 遠足/体育祭 |
6月 | 体力テスト/スピーチコンテスト |
7月 | English Summer Camp(1年) |
8月 | 合宿(部活) |
9月 | 9月生入学式 /桜陽祭 |
10月 | ー |
11月 | 開校記念日/修学旅行(2年) |
12月 | ー |
1月 | ー |
2月 | ー |
3月 | 卒業式/球技大会/芸術鑑賞教室 /修了式 |
都立国際高校の部活動や課外活動
運動部と文化部が合わせて20以上あり、どの部活動も活発に活動しています。運動部では、女子サッカー部が都大会3部リーグで首位に立つなど、着実な成果を上げています。女子バスケットボール部は東京都ベスト32を目標に活動し、チアリーディング部は大会での上位入賞を目指して練習に励んでいます。
文化部では、ウインドアンサンブル部が東京都高等学校吹奏楽コンクールに出場するなど、各部が対外的な成果を収めています。シンポジウム部は社会問題について調べ、ディベートや議論を行い、国際協力ボランティア同好会は地域清掃活動やフェアトレード商品の販売などに取り組んでいます。ジャパニーズスタイル部は和太鼓、琴、三味線、笛で創作演奏を行い、国際交流イベントでの演奏や留学生との交流も行っています。
都立国際高校の施設と環境
校舎は第一校舎と第二校舎からなり、第一校舎は主にレギュラーコースの授業、第二校舎は主にIBコースの授業に使用されています。図書館には30,000冊以上の蔵書があり、そのうち5分の1以上が外国語で書かれた本です。
少人数展開授業が多いため、ゼミ室が多数設置されています。LL教室ではオンライン英会話やリスニング演習を行うことができ、学年集会や行事などに使われる多目的ホール「桜陽ホール」も備えています。理科実験室や化学室なども充実しており、特にIBコース用の施設は国際基準に適合した設備が整っています。
都立国際高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
都立国際高校の偏差値は、複数の主要な予備校・教育機関のデータによると、62〜68の範囲に位置しています。
- みんなの高校情報:68(東京35位、都立9位)
- 市進教育グループ(80%合格基準):64(都立11位)
- V模擬(60%合格基準):62(東京48位、都立10位)
都立国際高校は、都立高校の中でも難関校に位置づけられています。進学指導特別推進校であり、また国際科という特別なプログラムを持つことから人気も高く、学力と国際教育の両面で高い意欲を持つ生徒が多く志願しています。
入試方式
都立高校ですから、推薦入試と一般入試の2つの入試方式があります。2025年度は昨年度は推薦入試が1月26日(土)と1月27日(日)、一般入試が2月21日(金)になります。
<参考情報>詳細はこちらの東京都教育委員会のサイトをご確認ください
都立高校の一般入試では、学力検査点と調査書点の合計(1000点)に英語スピーキングテスト[ESAT-J]の結果(20点)を加えた総合得点(1020点満点)順に選抜されます。面接や実技を実施する学校では、それらの得点も加えた総合成績順に選抜されます。また国際高校は国際科であるため、入試5科目の内、数学・国語・社会・理科は共通問題、英語のみ自校作成問題となっています。
上記の形式以外に、帰国生徒用の入試、在京外国人生徒用の入試、IBコースの入試があり、他の都立高校と比べて複雑な入試形態となっています。志望する場合は必ずホームページを確認しましょう。
入試倍率推移(一般)
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
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2025年 | 1.51倍 | 2.95倍 | 1.89倍 | 1.85倍 | 1.50倍 | 1.46倍 |
2024年 | 1.80倍 | 3.67倍 | 2.52倍 | 2.42倍 | 1.99倍 | 1.93倍 |
2023年 | 2.99倍 | 4.24倍 | 2.99倍 | 2.85倍 | 2.45倍 | 2.38倍 |
主な特徴と傾向
都立国際高校の入試倍率は3年間で急激に低下しています。特に合格倍率は2.38倍から1.46倍へと約38%減少し、この低下幅は他の都立高校と比較しても顕著です。全ての入試区分で同様の低下傾向が見られますが、特に校長会調査時の倍率が50%近く減少していることから、初期段階での志願意欲自体が大きく低下していることがわかります。
考えられる要因
- 私立高校の授業料実質無償化の影響:2024年から始まった東京都の私立高校授業料無償化政策により、ICU高校やアメリカンスクールなど国際教育に力を入れた私立高校への進学ハードルが下がり、受験生が流出した可能性が高い。
- 国際教育の多様化:他の都立高校でもSGHなど国際教育プログラムが充実し、国際高校の独自性が相対的に低下している可能性がある。
- グローバル教育需要の変化:コロナ禍以降の留学や国際交流に対する価値観の変化や、オンライン国際交流の普及により、物理的な国際教育環境の価値が変化した可能性がある。
今後の課題
都立国際高校は東京都唯一の国際科を持つ高校として、私立高校との差別化要素を再構築し、独自の教育価値を明確にすることが急務です。特に私立高校では提供できない公教育ならではの国際教育の強みを発掘し、効果的に広報活動を行うことが重要と考えられます。
倍率低下が続くと入学者の質や学校の評判にも影響を与える可能性があるため、カリキュラムや国際交流プログラムの刷新など、中長期的な学校改革の検討も必要でしょう。
国際教育と進学実績の両立を実現:都立国際高校が描く未来志向の教育モデル
都立国際高校は、国際教育のパイオニアとして確固たる地位を築きながら、進学校としての実績も着実に積み上げています。帰国生や在京外国人生徒との日常的な交流、充実した語学教育、そして国際バカロレアプログラムの提供など、グローバル人材の育成に力を入れる一方で、国内外の難関大学への進学実績も向上させています。
教育面では、少人数制の語学授業や習熟度別クラス編成、課題研究による探究的な学習など、きめ細かな指導を実践。自由な校風の中で、生徒一人一人が自分の目標に向かって主体的に学び、その過程で国際感覚も自然に身につけられる環境を整えています。
進学実績においても、2024年度には東京大学や医学部への現役合格を実現し、早慶上理やGMARCHへの合格者も過去最高水準を記録。海外大学進学者も毎年コンスタントに輩出するなど、多様な進路実現を可能にしています。部活動でも運動部・文化部ともに活発で、体育祭や桜陽祭といった学校行事も生徒が主体となって創り上げています。
34年という比較的短い歴史の中で、国際教育、進学実績、学校行事、部活動のどれもが充実し、バランスの取れた学校として成長を遂げてきた都立国際高校。「Keep Learning, Keep Changing, and Keep Smiling」のモットーのもと、生徒たちは明るく活発に学校生活を送っています。これからのグローバル社会で活躍したいと考える中学生にとって、間違いなく魅力的な選択肢となるでしょう。
今後も東京都を代表する進学校として、そして国際教育のフロントランナーとして、さらなる発展を続けていくことが期待されます。生徒一人一人の個性を大切にしながら、世界で活躍できる人材を育成する同校の取り組みは、まさに未来の教育のモデルケースとなっていくことでしょう。