東京都立井草高等学校は、1941年に創立された80年以上の歴史を持つ都立高校です。練馬区上石神井に位置し、「自主・自律・自由」という教育理念のもと、制服や頭髪規定のない自由な校風が特徴的です。しかし、その自由には責任が伴うという考え方を大切にしており、生徒一人ひとりが自らの行動に責任を持ち、主体的に考え行動することを重視しています。
近年、大学進学実績は着実に向上しており、2020年の70.0%から2024年には84.8%へと大学進学率が上昇。私立大学合格者数も5年間で36.4%増加し、特にGMARCHや日東駒専などの中堅私立大学への合格実績が充実しています。また、国際理解教育にも力を入れており、マレーシアへの海外修学旅行やオーストラリア国際交流プログラムなど、グローバルに活躍する人材育成に取り組んでいます。
本ガイドでは、井草高校の歴史と伝統、立地環境、教育方針、進路実績、学校行事、部活動、施設環境、入試情報などを総合的に紹介し、中学生やその保護者の皆様の進路選択の参考となる情報をお届けします。
都立井草高校の歴史と伝統
東京都立井草高等学校は1941年(昭和16年)1月27日に東京府立第十八高等女学校として設立認可を受け、同年4月5日に中野区鷺宮の仮校舎で開校しました。1942年(昭和17年)に府立井草高等女学校と改称し、1943年(昭和18年)2月に現在の練馬区上石神井の校舎に移転しました。
戦後の学制改革により1948年(昭和23年)に都立井草新制高等学校が設置され、1950年(昭和25年)に現在の「東京都立井草高等学校」という校名に改称されました。同年4月から男女共学となり、その後、入試制度の変遷を経て現在に至ります。2011年(平成23年)には創立70周年を迎え、長い歴史と伝統を持つ高校として地域に根付いています。
校章
校章は円の中央に「井」の字を配置し、その先が八方に伸びて外円と交わる形となっています。「井」は井草高校の第一文字であり、円は宇宙、世界、国家、社会、平和などを表しています。円と「井」を結ぶ線は協力または全体と個の関係を示し、「誇り高く」「力強く」「誠の心で」「清純に」「協力して」人類世界の理想を実現していく姿を象徴しています。
校歌
校歌は著名な歌人・土岐善麿氏が作詞、作曲家・芥川也寸志氏が作曲したもので、「世界の前に我等あり、井草高校」という歌詞に学校の理念が表現されています。
都立井草高校の立地と最寄り駅、周辺環境
住所 | 練馬区上石神井2丁目2番地43号 |
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最寄り駅 | ・西武新宿線 上石神井駅(急行・準急停車)から徒歩10分 ・西武新宿線 上井草駅(各駅停車)から徒歩8分 |
最寄り駅からのアクセス
- 西武新宿線 上石神井駅(急行・準急停車)から徒歩10分
- 西武新宿線 上井草駅(各駅停車)から徒歩8分
バスでのアクセス
- 西武バス:
・石神井公園駅から荻窪駅行き(「井草高校前」下車 徒歩1分)
・荻窪駅から石神井公園駅行き(「井草高校前」下車 徒歩1分)
・長久保から荻窪駅行き(「井草高校前」下車 徒歩1分)
周辺環境
井草高校は練馬区と杉並区の区境に位置しており、住宅地の中にある落ち着いた環境です。校名の「井草」は、実際には杉並区にある地名から取られています。周辺は閑静な住宅街で、教育環境としては恵まれた立地といえます。
都立井草高校の校風と教育方針
校訓
井草高校は「自主・自律・自由」を教育理念として掲げています。生徒一人ひとりが自分の行動に責任を持ち、主体的に考え行動することを重視しています。
教育目標
- 真理を探究し、問題を自ら解決する態度を培う
- 責任を重んじて自主的に行動し、勤労を尊ぶ健全な精神を育成する
- 礼儀を正しくし、気品に富む明朗な生き方を学ばせる
- 人権を尊重し、協力して社会の発展に貢献する人材を育成する
特色ある教育活動
井草高校では以下の3つのプロジェクトを教育の柱としています。
- 井草学力向上プロジェクト:一人一人の進路実現をサポートする教育課程
- 井草夢プロジェクト:大学入学を目標とした進路指導
- 井草国際理解教育プロジェクト:グローバルに活躍する人材を育成
特に国際理解教育に力を入れており、マレーシアへの海外修学旅行、オーストラリア国際交流プログラム、東京都教育委員会主催の「次世代リーダー育成道場」への参加、JICA国際協力出前授業など、多彩なプログラムを実施しています。
独自の校風
井草高校の最大の特徴は「自由な校風」です。制服や頭髪の色を規定しておらず、生徒は私服で登校することができます。しかし、自由には責任が伴うという考えのもと、生徒たちは自主・自律の精神を養いながら学校生活を送っています。
校長の粕谷真由美氏は「自らの進路を切り開くことができる生徒を育成する進学校」として井草高校を位置づけ、日々の学習や学校行事、部活動などを通じて様々な課題に対応できる能力と態度の育成を図っています。
都立井草高校の大学合格実績と進路指導
合格者総数の推移
井草高校の卒業生数は毎年270名前後で推移しており、大学進学率は年々向上しています。2020年から2024年までの5年間の推移を見ると下記のようになっています。
年度 | 卒業生 | 大学 | 短大 | 専門 | 留学 | 就職 | 浪人・未定 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2024年 | 270名 | 229名 (84.8%) | 0名 (0.0%) | 13名 (4.8%) | 0名 (0.0%) | 0名 (0.0%) | 28名<br>(10.4%) |
2023年 | 269名 | 219名 (81.4%) | 1名 (0.4%) | 9名 (3.3%) | 0名 (0.0%) | 2名 (0.7%) | 38名<br>(14.1%) |
2022年 | 272名 | 205名 (75.4%) | 0名 (0.0%) | 11名 (4.0%) | 0名 (0.0%) | 1名 (0.4%) | 55名<br>(20.2%) |
2021年 | 264名 | 186名 (70.5%) | 6名 (2.3%) | 20名 (7.6%) | 0名 (0.0%) | 1名 (0.4%) | 51名<br>(19.3%) |
2020年 | 263名 | 184名 (70.0%) | 5名 (1.9%) | 14名 (5.3%) | 0名 (0.0%) | 1名 (0.4%) | 59名<br>(22.4%) |
この5年間で大学進学率は70.0%から84.8%へと14.8ポイント上昇し、浪人・未定者の割合は22.4%から10.4%へと大幅に減少しています。就職者は極めて少なく、ほぼ完全な進学校として機能していることがわかります。
国公立大学合格実績
国公立大学合格者数は年度によって変動がありますが、2023年の17名をピークに、2024年は10名となっています。
区分 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|---|
国立合計 | 3名 | 5名 | 7名 | 12名 | 4名 |
公立合計 | 3名 | 2名 | 4名 | 2名 | 5名 |
大学校合計 | 2名 | 1名 | 1名 | 3名 | 1名 |
国公立合計 | 8名 | 8名 | 12名 | 17名 | 10名 |
2024年度の国立大学では電気通信大学や横浜国立大学(TOCKYグループ)への合格者、教員養成系大学である東京学芸大学への合格者が見られます。公立大学では東京都立大学への合格者が目立ち、国際教養大学への合格者も出ています。
私立大学合格実績
私立大学合格者総数は5年間で557名から760名へと36.4%増加しており、特にGMARCH、日東駒専、成成明学国武グループへの合格実績が充実しています。
大学グループ | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|---|
早慶 | 20名 | 11名 | 10名 | 18名 | 16名 |
上理ICU | 10名 | 8名 | 6名 | 9名 | 20名 |
GMARCH | 121名 | 139名 | 117名 | 187名 | 181名 |
成成明学国武 | 37名 | 89名 | 67名 | 77名 | 101名 |
日東駒専 | 131名 | 134名 | 148名 | 131名 | 178名 |
四理工+東農大 | 44名 | 51名 | 35名 | 47名 | 37名 |
その他私立 | 194名 | 244名 | 259名 | 246名 | 227名 |
私立合計 | 557名 | 676名 | 642名 | 715名 | 760名 |
2024年度は特に上理ICU(特に東京理科大学14名)への合格者が増加し、GMARCHでは法政大学(52名)、明治大学(38名)、立教大学(32名)への合格者が多く、日東駒専では東洋大学(81名)への合格者が突出しています。
進路指導の特徴と傾向
井草高校では「井草夢プロジェクト」と呼ばれる独自の進路指導プログラムを実施しています。このプロジェクトは以下の3つの柱から構成されています。
- キャリアガイダンス:外部講師による講演会、職業人や大学生の話を聞く機会を設け、具体的な進路活動のきっかけを作る
- プレカレッジプログラム:大学から講師を招いて模擬授業を行い、大学の学びに直接触れる機会を提供
- 進路サポート:各種選考での受験方法を学び、模擬試験で実力養成をはかる
また「井草学力向上プロジェクト」の一環として、土曜授業(年間18回)を実施し、週33単位の授業を確保。1〜2年次に大学受験に必要な科目の授業数を増やし、英語と数学では習熟度別授業を実施するなど、きめ細かい指導を行っています。さらに各種講習(ステップアップセミナー、インテンシブセミナー、夏季集中講習など)も充実させています。
こうした取り組みにより、大学進学率の向上と浪人・未定者の減少という成果を上げており、生徒一人ひとりの適性と希望に合わせた進路選択を可能にする指導体制が整っています。

都立井草高校のイベント・学校行事
主な年間行事
井草高校の主な年間行事は以下の通りです。
- 4月:始業式、入学式、新歓祭
- 5月:生徒総会、綱引き大会、体育祭、中間考査
- 6月:遠足、芸術鑑賞教室、宿泊防災訓練
- 7月:期末考査、米国高校生来校、球技大会、ビブリオバトル、終業式
- 8月:インテンシブセミナー、オーストラリア国際交流プログラム、部活動合宿
- 9月:始業式、井草祭(文化祭)
- 10月:開校記念日、中間考査
- 11月:修学旅行
- 12月:期末考査、終業式
- 1月:始業式、卒業考査
- 2月:異文化交流プログラム
- 3月:学年末考査、卒業式、国際理解講座、球技大会、修了式
特色ある行事
井草祭(文化祭)
「井草祭」は毎年9月中旬に行われる文化祭で、全校が一色となり盛り上がります。当日には井草祭常任委員が作成した巨大なゲートが入口に設置され、各クラスや部活動による様々な展示や催しが行われます。生徒会長の言葉によれば、「井草祭では同じクラスの仲間とより交流を深め、一生思い出に残る出し物を準備する」そうです。
体育祭
体育祭は井草高校で最も盛り上がる行事の一つで、クラスごとの応援団が本格的なダンスパフォーマンスを行います。同じ団の仲間と切磋琢磨して優勝を目指す姿が見られ、学校全体の一体感を生み出しています。
国際交流行事
- オーストラリア国際交流プログラム:8泊10日の日程でシドニー郊外のToongabbie Christian Collegeを訪問し、現地の授業を受けたり、ホームステイを体験
- 修学旅行:2年生がマレーシアを訪問し、現地校との交流やプレゼンテーションを通じて国際理解を深める
- 東京体験スクール:オーストラリアからの留学生を受け入れ、授業や部活動を通じて交流
- JICA国際協力出前授業:来日中のJICA研究員による母国の文化紹介
- 国際理解講座:各国大使館を訪問し、その国の文化や歴史について学ぶ
都立井草高校の部活動や課外活動
運動部
井草高校には以下の運動部があります。
- 硬式野球部
- サッカー部
- 男子バスケットボール部
- 女子バスケットボール部
- 男子バレーボール部
- 女子バレーボール部
- バドミントン部
- ダンス部
- 硬式テニス部
- ソフトテニス部
- フットサル部
- 陸上競技部
- 水泳部
- 弓道部
- 剣道部
- 卓球部
文化部
文化部には以下の部活動があります。
- 書道部
- 茶道部
- 吹奏楽部
- 演劇部
- 美術部
- ESS(English Speaking Society)部
- 社会福祉研究部
- 漫画研究部
- 料理研究部
- 文芸部
- 写真部
- 天文部
- 生物部
特色ある活動
ダンス部
ダンス部は全国大会の常連校として知られ、USA大会(ヒップホップ部門)全国大会上位入賞やダンススタジアム準決勝大会出場を目指して活動しています。部員数も1年生20名、2年生26名と多く、学校の中でも注目される部活動の一つです。
弓道部
弓道部も盛んで、部員数が68名(男子27名、女子41名)と多く、都大会上位入賞と上位大会入賞を目標に活動しています。
フットサル部
都立高校では珍しいフットサル部があり、フットサルフェスタ関東大会出場やCOLOカップ優勝などを目指して活動しています。
書道部
書道部は東京都高等学校文化連盟書道展で教育委員会賞、高文連賞、優秀賞、団体賞を受賞し、全国総合文化祭(全国大会)にも出場するなど、高い実績を誇ります。
水泳部
水泳部は都立高校では唯一となる水球にも挑戦しており、女子は関東大会出場、東京都代表にも選出されています。高校から水泳を始めた部員も多く、初心者でも歓迎する雰囲気があります。
都立井草高校の施設と環境
主な施設
井草高校の主な施設は以下の通りです。
- 校舎(本館、北校舎、特別教室棟など)
- 体育館
- グラウンド
- サブグラウンド
- テニスコート
- プール
- 弓道場
- 剣道場
- トレーニングルーム
- 自習室
特色ある施設・環境
井草高校の校地面積は23,068m²(当初)で、現在は敷地に隣接して943.88m²を追加取得しています。2008年(平成20年)には北校舎の耐震補強および管理棟校舎工事が完了し、安全な学習環境が整備されています。
学習環境としては、自習室が月曜日から土曜日まで開設されており、授業のある日や長期休みの平日に自由に利用することができます。また、理科の実験室や情報教室など、専門的な学習に対応した施設も整っています。
部活動のための専用施設として、弓道場や剣道場、トレーニングルームなどがあり、充実した活動環境が整っています。
都立井草高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
- みんなの高校情報:59(東京157位、都立34位)
- 市進教育グループ(80%合格基準):57(都立32位)
- V模擬(60%合格基準):55(東京177位、都立30位)
井草高校の偏差値は概ね55~60とされており、都立高校の中では中堅上位に位置しています。学習面での要求水準は高めですが、「自主・自律・自由」という校風に共感し、主体的に学ぶ意欲のある生徒を求めています。
入試倍率推移
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2025年 | 1.19倍 | 2.25倍 | 1.41倍 | 1.44倍 | 1.29倍 | 1.28倍 |
2024年 | 1.52倍 | 2.61倍 | 1.86倍 | 1.91倍 | 1.65倍 | 1.64倍 |
2023年 | 1.28倍 | 2.44倍 | 1.61倍 | 1.61倍 | 1.48倍 | 1.47倍 |
2024年以降実施となった男女合同定員化、東京都の政策としての私立高校の授業料の実質無償化の影響は受け倍率が減少しているものの、都立高校の中では中程度の人気校となっています。
自主・自律・自由の精神で未来を切り拓く都立井草高校の多彩な魅力
東京都立井草高校は、1941年の創立以来、80年以上の歴史と伝統を持つ進学校です。「自主・自律・自由」という教育理念のもと、制服や頭髪規定のない自由な校風が特徴ですが、その自由には責任が伴うという考え方を大切にしています。
進学実績は年々向上しており、2020年から2024年にかけて大学進学率は70.0%から84.8%へと14.8ポイント上昇。私立大学合格者数も557名から760名へと36.4%増加し、特にGMARCH、日東駒専、成成明学国武グループへの合格実績が充実しています。
国際理解教育にも力を入れており、マレーシアへの海外修学旅行やオーストラリア国際交流プログラムなど、グローバルに活躍する人材育成に取り組んでいます。
部活動も盛んで、特にダンス部や弓道部、書道部などが高い実績を誇り、都立高校では珍しいフットサル部や水球に挑戦する水泳部など、特色ある活動も見られます。
井草高校は「学ぶ喜びや感動を原動力に、自らの進路を切り開くことができる生徒を育成する進学校」として、自主・自律の精神を養う教育活動を充実させ、様々な課題に対応できる能力と態度の育成を図っています。また、国際理解教育や奉仕活動等を通して人権について学び、多様な人々を受容し、社会に貢献できる人材の育成を目指しています。
中学生の皆さんへ、生徒会長の言葉を借りれば、「将来に繋がるような高校を探してみてほしい」とのこと。生徒が主体的に創っていける高校をお探しなら、ぜひ井草高校を検討してみてはいかがでしょうか。