東京都立高校の推薦入試は、学力検査だけでなく生徒の多様な能力や資質を総合的に評価する選抜方法です。この制度は基礎的な学力を前提としながらも、思考力、判断力、表現力などの課題解決能力や、効果的なコミュニケーション能力など、これからの社会で求められる幅広い力を測ることを目的としています。
令和7年度(2025年)の入試を例に、推薦入試の仕組みや特徴、対象となる条件について把握しておきましょう。推薦入試には「一般推薦」「文化・スポーツ等特別推薦」「理数等特別推薦」の3種類があり、それぞれ異なる特徴と選考基準があります。また、高校によって検査内容や配点も異なるため、志望校の選抜方法を十分に理解した上で準備を進めることが成功への近道となります。この記事では、推薦入試の基本的な情報から選考方法、効果的な対策、必要な準備まで幅広く紹介していきます。受験生の皆さんが自分の強みを最大限に発揮できるよう、具体的かつ実践的な情報をお届けします。
推薦入試の概要
推薦入試は、基礎的な学力を前提としつつ、思考力や判断力、表現力などの課題解決能力や、コミュニケーション能力など、これからの社会で必要となる力を評価して選抜する入試制度です。主に都立高校全日制課程で実施され、中学校長の推薦を受けた生徒が応募できます。
推薦入試の対象となる条件
- 令和6年12月31日現在、都内在住で都内の中学校に在学している
- 入学後も引き続き都内に在住する予定
- 令和7年3月に都内の中学校を卒業する見込みの生徒
- 志願する都立高校を第1志望とする生徒
推薦入試の種類
一般推薦
- 中学校長の推薦を受けた生徒が応募可能
- 検査内容:集団討論、個人面接、小論文または作文、実技検査など
- 個人面接は原則として全校実施、集団討論は必要と判断する学校で実施
- 選考方法:調査書点と各検査の点数を総合した成績で選考
文化・スポーツ等特別推薦
- 実施する学校と実施しない学校があり
- 募集人員は一般推薦の募集人員に含まれる
- 検査内容:個人面接または集団面接、実技検査
- 例:上野高校(バレーボール男子)、本所高校(ハンドボール男子、ローイング男女)
理数等特別推薦
- 立川高校の創造理数科および科学技術高校の創造理数科で実施
- 検査内容:科学分野等の研究に関するレポートについての口頭試問、個人面接、小論文
調査書点の算出方法
推薦入試における調査書点は、次のいずれかの方法で点数化されます。
- 観点別学習状況の評価:全27観点の評価を点数化
- 評定:9教科の評定を点数化
高校によって特定の観点の配点を高くするなどの特色があります。エンカレッジスクールでは観点別学習状況の評価が用いられます。
令和7年度(2025年)都立高校推薦入試の日程
主要日程
項目 | 日程 |
---|---|
出願受付期間 | 令和7年1月9日(木)~1月16日(木) |
検査実施日 | 令和7年1月26日(日)・1月27日(月) |
合格発表日 | 令和7年1月31日(金) |
特別な日程
- 都立国際高校 国際バカロレアコース
・入学願書:学校への持参
・出願受付期間:1月21日(火)・22日(水)
・その他の日程は一般の推薦入試と同じ
インターネット出願の流れ
- インターネット出願サイトにアクセス、ユーザID取得
- 顔写真データ(JPEG/PNG形式)を登録
- 志願者情報の入力(氏名、生年月日、中学校名、保護者名、現住所等)
- 中学校での出願情報確認・承認
- 入学考査料の支払い(クレジットカードまたは納付書)
- 提出書類の郵送
- 受検票のダウンロード・印刷
都立高校推薦入試の選抜方法と評価基準
選抜の流れ
- 中学校長による推薦
- 出願書類の提出
- 検査の実施(個人面接、集団討論、小論文・作文、実技検査など)
- 調査書点と検査点の総合による選考
- 合格発表
内申点の扱いと計算方法
一般選抜の内申点計算方法(65点満点)
学年 | 教科・配点 |
---|---|
中1 | – |
中2 | – |
中3 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定×2倍 |
芸術・体育に関する学科の内申点計算方法(75点満点)
学年 | 教科・配点 |
---|---|
中1 | – |
中2 | – |
中3 | 国・数・英の3教科×5段階評定 + それ以外の6教科×5段階評定×2倍 |
主な高校の推薦入試内容例
高校名 | 推薦枠 | 調査書 | 面接 | 小論文/作文 | 実技検査等 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
日比谷 | 20% | ○ | – | 小論文(250点) | – | – |
戸山 | 20% | ○ | – | 小論文(300点)<br>*異なる分野の課題2題 | – | – |
青山 | 20% | ○ | – | 小論文(500点) | – | – |
八潮 | 20% | ○ | – | 作文(250点) | – | 集団討論(250点) |
深川 | 20% | ○ | – | 作文(180点) | – | – |
文化・スポーツ等特別推薦の例
高校名 | 種目 | 人数 | 面接 | 実技検査 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
上野 | バレーボール | 男・3名 | 集団(150点) | 350点 | 都大会準優勝、関東大会出場 |
本所 | ハンドボール | 男・3名 | 個人(100点) | 300点 | 都大会出場、関東大会出場 |
本所 | ローイング | 男女・2名 | 個人(200点) | 200点 | 全国大会入賞、関東大会優勝 |
城東 | バスケットボール | 男女・4名 | 個人(250点) | 200点 | 都大会ベスト8、関東大会出場 |
面接の評価ポイント
面接では主に以下のポイントが評価されます。
- 志望動機と高校での学習意欲
- 中学校での活動実績
- 自分の考えを表現する力
- 質問に対する理解力と応答力
- 将来の目標や展望
小論文・作文の出題傾向
主な出題テーマ
- 社会問題に対する意見
- 学校生活や将来の目標
- 文学作品や新聞記事の感想・意見
各高校の例
- 日比谷高校:小論文(250点)
- 戸山高校:小論文(300点)、異なる分野の課題2題
- 上野高校:小論文(350点)
集団討論実施校と配点例
集団討論を実施する主な高校
- 向丘高校
- 上野高校
- 城東高校
- 八潮高校
推薦入試の倍率は高校によって大きく異なります。過去のデータを参考に志望校選定をすることが重要です。
倍率の傾向
- 高倍率傾向の学校:日比谷高校、青山高校、新宿高校、国際高校など
- 中程度の倍率の学校:学力中位校(約2~2.5倍)など
- 比較的倍率が低い学校:新設校、郊外の学校(約1.5~2倍)など
一般推薦と特別推薦の比較
推薦種別 | 倍率傾向 | 特徴 |
---|---|---|
一般推薦 | 高い | 多くの生徒が応募可能、学業成績とコミュニケーション能力が重視される |
文化・スポーツ等特別推薦 | 低~中程度 | 特定分野の実績・能力が必要、応募資格を満たせば比較的低倍率 |
理数等特別推薦 | 中程度 | 科学分野に特化、該当分野に秀でた生徒に有利 |
合格しやすい高校・難関校の特徴
合格しやすい傾向の高校
- 郊外に位置する高校
- 新設校
- 特色ある学科を設置している高校
難関校の特徴
- 伝統校(日比谷、西、戸山など)
- 進学実績の高い高校
- 都心に位置する高校
推薦入試の対策方法
内申点向上のための戦略
- 定期テスト対策の徹底
・計画的な学習スケジュール作成
・重要単元の確実な理解
・過去問による演習 - 授業態度の改善
・積極的な発言・発表
・提出物の期限厳守
・予習・復習の習慣化 - 実技教科の重視
・音楽、美術、保健体育、技術・家庭科も真剣に取り組む
・実技試験の練習
・提出作品の丁寧な仕上げ - 観点別評価への対応
・「知識・技能」:基礎知識の習得
・「思考・判断・表現」:考えをまとめる力、表現する力の養成
・「主体的に学習に取り組む態度」:自主学習の習慣化
面接対策の頻出質問と回答例
質問例 | 回答のポイント |
---|---|
志望理由 | 学校の特色と自分の興味・目標を結びつける |
高校でやりたいこと | 具体的な学習内容や部活動、行事など |
将来の夢 | 明確な目標と、その目標を実現するための高校生活の位置づけ |
長所・短所 | 長所は具体例と共に、短所は改善への取り組みも伝える |
中学校での思い出 | 学びや成長につながった経験を中心に |
小論文・作文の練習方法
- 過去問分析
・志望校の出題傾向把握
・テーマの傾向分析
・評価ポイントの理解 - 構成の習得
・序論:問題提起(150字程度)
・本論:具体例
・自分の意見(400字程度)
・結論:まとめ(150字程度) - 時事問題への関心
・新聞・ニュースの定期的チェック
・社会問題についての意見形成
・ディスカッションによる視野拡大 - 添削指導の活用
・教師による添削
・表現力・論理性の向上
・誤字脱字のチェック
都立高校推薦入試に必要な準備
出願に必要な書類と準備スケジュール
時期 | 準備内容 |
---|---|
11月〜12月 | ・志望校の選定 ・推薦の相談(担任・進路指導) |
12月中旬〜下旬 | ・インターネット出願の登録準備 ・顔写真の準備 ・推薦書類の準備 |
1月上旬 | ・出願手続き(1/9〜1/16) ・入学考査料の支払い |
1月中旬〜下旬 | ・受験票の印刷 ・面接/小論文など最終対策 ・試験(1/26・27) |
1月末 | ・合格発表(1/31) |
受験直前チェックリスト
- □ 受験票の印刷確認
- □ 筆記用具・時計など持ち物の準備
- □ 試験会場への経路確認・交通手段の計画
- □ 体調管理(十分な睡眠・バランスの良い食事)
- □ 面接での服装・身だしなみの確認
- □ 緊張緩和のためのリラックス法の習得
自分の強みを最大限に活かす推薦入試で理想の高校進学を実現しよう
東京都立高校の推薦入試は、従来の学力検査だけでは測れない生徒の多様な能力や可能性を評価する重要な選抜制度です。令和7年度の入試では、1月上旬から中旬の出願期間、1月下旬の試験実施、1月末の合格発表と、一般入試よりも早い時期に実施されるため、計画的な準備が不可欠となります。推薦入試の魅力は、単に教科の点数だけでなく、これまでの学校生活全般における取り組みや、コミュニケーション能力、思考力、表現力などが総合的に評価される点にあります。
推薦入試には一般推薦、文化・スポーツ等特別推薦、理数等特別推薦の3種類があり、それぞれの選考基準や検査内容は高校によって多様です。志望校選定の際には、自分の強みを最大限に活かせる高校・学科を選ぶことが重要です。内申点は中学3年生の成績のみが評価対象となり、一般選抜の場合は5教科と実技4教科(2倍)の合計65点満点、芸術・体育に関する学科では国数英3教科とそれ以外の6教科(2倍)の合計75点満点となります。推薦入試では、これに加えて面接や小論文、実技検査などの結果も総合して選考が行われます。
効果的な対策としては、日頃からの学習習慣の確立による内申点向上、志望校の選抜方法に合わせた面接練習や小論文対策、そして特別推薦を目指す場合は専門分野の技能向上が欠かせません。また、インターネット出願の手続きや必要書類の準備など、事務的な面での計画的な準備も重要です。推薦入試は一般入試とは異なる準備が必要ですが、自分の強みや個性を発揮できる絶好の機会です。
受験生の皆さんには、この記事で紹介した情報を参考に、自分に合った志望校を見つけ、計画的に準備を進めて、自分の能力を最大限に発揮できるよう努力することをお勧めします。保護者の方々も、お子さんの得意分野や興味関心を理解し、適切なサポートを通じて、充実した高校生活への第一歩を応援してください。推薦入試を通じて、皆さんが自分の可能性を広げ、理想の進路を実現されることを心より願っています。