東京都立南平高等学校は、1985年に開校した東京都日野市にある全日制普通科高校です。「ノーチャイム制」で知られる自主自律の精神を重視した教育方針と、多摩丘陵の豊かな自然環境に囲まれた恵まれた立地が特徴です。校訓「正しい理念」「希望と意志」「行動と反省」と、古代ギリシャの「汝自身を知れ」という箴言を教育の基本とし、自立した人材育成に取り組んでいます。
大学進学実績では、GMARCHと日東駒専を中心とした私立大学への合格者が多く、近年は国公立大学合格者も増加傾向にあります。充実した部活動や特色ある学校行事も魅力で、文武両道を実践する進学校として地域に根ざした教育を展開しています。
都立南平高校の歴史と伝統
東京都立南平高等学校は、1984年11月に東京都公立学校設置条例により設置が公布され、1985年4月に開校した全日制普通科高校です。当初は日野市高幡の仮設校舎で授業を開始し、翌1986年3月に現在の日野市南平8-2-3に新校舎が竣工、移転しました。
初代校長は沼田俊一氏で、第1期生は男子190名、女子180名の計370名が入学しました。現在は創立40周年を迎え、地域に根ざした普通科高校として確固たる地位を築いています。
開校当初から「ノーチャイム制」を採用するなど、自立した社会人の育成を重視した教育方針を持ち、この伝統は現在も引き継がれています。1994年には創立10周年記念式典、2004年には創立20周年記念式典、2014年には創立30周年記念式典が挙行されました。
学校のシンボルとして1986年4月に『若草の詩』(文化のデザイン)の像が設置され、校章には泰山木の花とタマノカンアオイがモチーフとなっています。校歌は1985年11月に制定され、作曲は三善晃氏によるアカペラ混声四部合唱曲となっています。
都立南平高校の立地と最寄り駅、周辺環境
最寄り駅からのアクセス
京王線南平駅から徒歩約10分という交通至便の立地にあります。ただし、学校への道は坂が避けられず、東方面からの緩やかな坂道と西方面からの急勾配な坂道の2ルートが存在します。混雑を避けるため、1年生は東方面の坂、2・3年生は西方面の坂を使用することが決められています。
住所 | 東京都日野市南平8丁目2−3 |
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アクセス | 京王線南平駅より徒歩約10分 |
周辺環境
多摩動物公園の北側に位置し、南平丘陵公園が隣接する自然豊かな環境にあります。小高い丘の中腹に位置し、豊かな緑に囲まれた静かな環境で学習できるのが特徴です。
学校周辺はカラスが多く生息しており、ビニール袋や紙袋を持って周辺を歩くと襲われることもあるという特徴もあります。自然と共存する環境ならではの一面と言えるでしょう。
都立南平高校の校風と教育方針
校訓
「正しい理念」「希望と意志」「行動と反省」を校訓として掲げています。
教育目標
- 自立した個人としての成長をめざし、自主自律の精神を実践する人を育てる。
- 有為な社会人をめざし、奉仕と連帯の精神を実践する人を育てる。
- 平和的な国際人をめざし、正義を愛し人権を重んじ自他を大切にする人を育てる。
特色ある教育活動
南平高校では、自学自習の習慣化を重視し、土曜日授業を行わない代わりに自学自習・部活動・個別指導等を推進しています。「学習記録表」による学習状況の把握やポートフォリオ作成、週末課題・小テストの実施を通して、高校1年から自学自習の習慣化を目指しています。
国公立大学や難関私立大学の受験に対応したカリキュラムを採用し、数学II・数学B・数学C、論理・表現II、論理・表現IIIでは習熟度別授業も行っています。また、例年3月に1年生全員で中央大学を訪問する「中央大学ガイダンス」を実施するなど、進学意識を高める取り組みも特徴的です。
令和5年2月には東京薬科大学との高大連携を締結し、東京都教育委員会からは進学指導研究校(第3期)、SIP(Scientific Inquiry Program)拠点校、エンジョイスポーツプロジェクト、海外学校間交流推進校の指定を受けています。
独自の校風
南平高校の最大の特徴は「ノーチャイム制」の採用です。授業の始まりや終わりにチャイムはなりませんが、自主自律の精神のもと、生徒一人一人が時間を意識して自己管理を行うことで、授業や集会は何ら支障なく行われています。
通用門を入って左手法面の壁には、「GNOTHI SEAUTON」(クノオティ セアウトオン)の文字が刻まれたプレートが埋め込まれています。これは古代ギリシアの賢人によってデルフォイのアポロン神殿に奉納された箴言で、「汝自身を知れ」という意味の言葉です。この精神が南平高校の教育の基本となっています。
また、自然豊かで落ち着いた校風も特徴で、生徒たちは挨拶が良く、来校者を明るく元気な挨拶でお出迎えする校風があります。
都立南平高校の大学合格実績と進路指導
合格者総数の推移
南平高校の大学合格者数(現役生のみ)は次のように推移しています。
大学種別 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
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国公立大学 | 12名 | 10名 | 15名 | 24名 | 19名 |
私立大学 | 818名 | 503名 | 918名 | 794名 | 1017名 |
合計 | 830名 | 513名 | 933名 | 818名 | 1036名 |
現役生の一人当たりの平均合格大学数は2024年度で約3.7校(1,036名÷276名≒3.75)となっており、複数の大学・学部に合格する生徒が多いことを示しています。
国公立大学合格実績
国公立大学への合格状況は近年向上しており、特に2023年度は24名と5年間で最多の合格者を出しています。
大学群 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 5年間計 |
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東京一科 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 |
旧帝大 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 |
TOCKY | 1人 横浜国立(1) | 0人 | 0人 | 3人 筑波(1)、千葉(1)、横浜国立(1) | 0人 | 4人 |
その他国公立 | 11人 | 10人 | 15人 | 21人 | 19人 | 76人 |
合計 | 12人 | 10人 | 15人 | 24人 | 19人 | 80人 |
2024年度の主な合格大学としては、東京都立大学(9名)、東京学芸大学(3名)、東京外国語大学、東京農工大学、信州大学などがあります。
私立大学合格実績
私立大学の合格状況は次のとおりです。
大学群 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|---|
早慶 | 6人 | 7人 | 18人 | 2人 | 6人 |
上智・理科 | 7人 | 4人 | 5人 | 14人 | 5人 |
GMARCH | 142人 | 158人 | 208人 | 142人 | 222人 |
成成明学國武 | 54人 | 81人 | 91人 | 65人 | 90人 |
日東駒専 | 174人 | 186人 | 165人 | 150人 | 202人 |
四理工+東農大 | 72人 | 52人 | 44人 | 45人 | 49人 |
その他 | 363人 | 415人 | 387人 | 376人 | 445人 |
合計 | 818人 | 903人 | 918人 | 794人 | 1,017人 |
2024年度は特に中央大学(75名)、法政大学(71名)、東洋大学(72名)への合格者が多く、GMARCHと日東駒専が主な進学先となっています。また、2022年度には早慶で18人、2023年には上智・東京理科への合格者が14名と2桁合格を出しています。
進路指導の特徴と傾向
南平高校の進路指導目標は「生徒一人一人が自分自身を理解し、最も適した進路選択をすること」と「基礎基本の定着を経て学力の向上を図り、進路実現に向けて努力する姿勢を身に付けること」です。
3年間の系統的な進路指導計画に基づき、以下のような特徴的な取り組みを行っています。
- 1年生向け:分野別説明会(20大学の代表による各分野の説明)、「学生図鑑」(大学生との交流)
- 2年生向け:大学説明会(15大学による説明会)、進路講演会(河合塾による入試対策講座)
- 3年生向け:各種模擬試験、個別面談、志望校別指導
また、高大連携の一環として1年生全員が中央大学を訪問する「中央大学ガイダンス」を実施し、卒業生の体験談を聞く「受験報告会」も行われています。

都立南平高校のイベント・学校行事
主な年間行事
南平高校の主な年間行事は以下の通りです。
- 4月:入学式、新入生歓迎会、対面式、避難訓練、セーフティ教室
- 5月:球技大会
- 6月:合唱コンクール、中間考査
- 7月:期末考査、部活動合宿、夏季講習、セーフティ教室、保健講話
- 8月:部活動合同合宿、夏季講習
- 9月:葵陵祭(文化祭・体育祭)、避難訓練
- 10月:中間考査、修学旅行(2年)
- 12月:期末考査、芸術鑑賞教室(1・2年)、ウィンターセミナー(2年)、冬期講習
- 1月:避難訓練
- 2月:マラソン大会
- 3月:学年末考査、卒業式、中央大学ガイダンス、現役合格者の話を聞く会
特色ある行事
南平高校の特色ある行事としては、以下のものが挙げられます:
- 葵陵祭:毎年9月に開催される文化祭(2日間)と体育祭(1日間)を合わせたイベントです。名称は学校の花である「タマノカンアオイ」に由来しています。文化祭では一般公開され、文化祭1日目の終了後には「中夜祭」と呼ばれる生徒のみが参加するイベントも行われます。
- 合唱コンクール:6月上旬に行われ、各クラスが課題曲と自由曲を披露します。1年生の課題曲は校歌であり、南平高校の校歌は三善晃作曲のアカペラ混声四部合唱曲となっています。
- マラソン大会:2月に行われる伝統行事で、開校当初は校舎建設予定地をスタート・ゴールとして実施されていました。
- 中央大学ガイダンス:例年3月に1年生全員で中央大学を訪問し、本校から中央大学に進学した先輩の話を聞くなど、貴重な進学意識向上の機会となっています。
都立南平高校の部活動や課外活動
運動部
南平高校には以下の運動部があります。
- サッカー部
- 硬式野球部
- 男子バレーボール部
- 女子バレーボール部
- 男子バスケットボール部
- 女子バスケットボール部
- 男子硬式テニス部
- 女子硬式テニス部
- 陸上競技部
- 水泳部
- バドミントン部
- ハンドボール部
- ソフトボール部
- ソフトテニス部
- 卓球部
- ダンス部
- 自転車競技部(部としての活動はなく、個人でのレース参戦)
文化部
文化部は以下の通りです:
- 演劇部
- 将棋・チェス部
- 吹奏楽部(2001、2005、2007、2018年度東日本学校吹奏楽大会出場)
- 室内楽部
- 茶道部
- 美術部
- 家庭科部
- 合唱部
- 写真・映像部
- 自然科学部
- ジャグリング部
特色ある活動
特色ある部活動として特筆すべきは「ジャグリング部」です。これは全国的に見ても珍しい部活動であり、NHKの番組にも出演した実績があります。ボール、ディアボロ(空中ゴマ)、ポイ(両手で回す2本の紐)の3種類の道具を基本として活動し、文化祭での公演に向けて練習しています。
また、女子バスケットボール部は2024年1月の東京都総体でベスト16に入り、東京都高体連より優秀校として表彰されています。
部活動は顧問の先生方や外部指導者、保護者の方々の支援を受けながら活発に活動しており、部活動加入率も高いのが特徴です。
都立南平高校の施設と環境
主な施設
南平高校には以下の主な施設があります。
- 校舎(4階建て)
- 体育館
- 格技棟(上が体育館、下は半地下になっている武道場)
- テニスコート
- グラウンド
- 自習室
- 自習スペース
- PC・LL教室
- 図書室
- 和室
- 生徒ホール
- パン購買所
特色ある施設・環境
南平高校の特色ある施設や環境として以下が挙げられます。
- ガラスドーム付き屋内プール:自慢の施設として挙げられていますが、温水プールではありません。
- 中庭にある日時計:校内の特徴的な設備の一つです。
- 通用門脇の「Gnōthi sauton」プレート:「汝自身を知れ」という古代ギリシャの言葉が刻まれており、南平高校の教育理念を象徴しています。
- 「若草の詩」の像:格技棟の前に設置されているシンボル像です。
- 職員室前の個別指導スペース:個別指導用の机とホワイトボードがあり、生徒が疑問をすぐに解決でき、個別指導を受けやすい環境が整っています。
- 自然環境との調和:校舎は多摩丘陵の自然環境を巧みに生かして設計されており、学習に最適な静けさと落ち着きを持っています。
都立南平高校の入試倍率と偏差値
入学難易度(偏差値)
南平高校は都立高校の中では中堅レベルに位置しており、偏差値は概ね60前後です。難関大学への進学実績も徐々に向上しており、進学校としての評価も高まっています。
- みんなの高校情報:62(東京111位、都立27位)
- 市進教育グループ(80%合格基準):58(都立31位)
- V模擬(60%合格基準):55(東京177位、都立30位)
入試倍率推移
校長会調査時倍率 | 応募倍率(推薦) | 応募倍率(一般) | 最終応募倍率(一般) | 受検倍率(一般) | 合格倍率(一般) | |
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2025年 | 1.17倍 | 1.34倍 | 1.43倍 | 1.44倍 | 1.37倍 | 1.35倍 |
2024年 | 1.44倍 | 2.44倍 | 1.54倍 | 1.57倍 | 1.49倍 | 1.47倍 |
2023年 | 1.47倍 | 1.92倍 | 1.47倍 | 1.47倍 | 1.46倍 | 1.44倍 |
近年の入学者数は毎年320名前後で推移しており、男女比はほぼ同等です。2024年度の入学者数は男子156名、女子164名の計320名となっています。
ノーチャイム制と進学実績で光る、都立南平高校の挑戦
都立南平高校は、1985年の開校以来、「ノーチャイム制」に代表される自主自律の精神を育む教育方針のもと、知性と品格を持つ人材育成に取り組んできました。多摩丘陵の豊かな自然環境に恵まれた立地条件と、優れた教育環境の中で、生徒たちは学習活動、学校行事、部活動に全力で取り組んでいます。
進学実績においては、GMARCHと日東駒専を中心とした私立大学への合格者が多く、近年は国公立大学への合格者も増加傾向にあります。2024年度は特に中央大学、法政大学、東洋大学への合格者が多く、東京理科大学への合格者も大幅に増加するなど、進学校としての評価を高めています。
「汝自身を知れ」という古代ギリシャの箴言を校是とし、「正しい理念」「希望と意志」「行動と反省」の校訓のもと、自立した個人、有為な社会人、平和的な国際人の育成を教育目標に掲げ、40年の歴史の中で着実に成果を上げてきた南平高校は、今後も地域に根ざした進学校として発展していくことが期待されます。