都立高校の「文化・スポーツ等特別推薦」制度は、スポーツや文化・芸術活動において優れた実績を持つ生徒を対象に、通常の推薦入試や一般入試とは別枠で、特別に推薦を受けて入学できる制度です。主にスポーツ、文化芸術の分野で活躍している中学生が対象で、都立高校での更なる活動を期待される生徒が選ばれます。
文化・スポーツ等特別推薦の対象分野と実施高校
- スポーツ推薦:陸上、サッカー、バスケットボール、野球、バレーボール、水泳など、各学校で指定されているスポーツ種目に対して行われます。最も多いのは硬式野球で56校、213人枠が確保されています。都立高校は全部で186校ですから、およそ3割の学校で硬式野球のスポーツ推薦が実施されていることになります。
- 文化推薦:音楽(吹奏楽、合唱)、美術、書道など、各高校で特に重視される文化・芸術活動が対象です。中学生時代に、通学している学校や地域の団体で該当の分野での実績がなくとも推薦が受けられる場合もあります。
以下にて、各種目や分野ごとにスポーツ・文化特別推薦を実施している高校を一覧化しました。各高校での推薦条件や推薦受け入れ人数などは公式情報で必ず確認してください。
スポーツ分野での特別推薦対象競技と実施校
種目 | 実施校数 | 実施校 |
---|---|---|
アーチェリー | 1校 | 山崎 |
空手 | 1校 | 東村山西 |
剣道 | 15校 | 青梅総合、葛西南、久留米西、鷺宮、篠崎、上水、墨田川、高島、多摩工科、晴海総合、光丘、深川、深川(外国語コース)、松が谷、向丘 |
柔道 | 7校 | 荒川工科、葛飾野、石神井、杉並工科、墨田川、田無、豊島 |
相撲 | 1校 | 足立新田 |
なぎなた | 1校 | 城東 |
サッカー(男子) | 31校 | 足立、片倉、葛飾野、小平南、狛江、鷺宮、石神井、城東、墨田川、高島、豊島、豊多摩、八王子北、東、東久留米総合、東大和、東大和南、光丘、深川、深川(外国語コース)、富士森、府中東、府中西、福生、保谷、松が谷、南葛飾、美原、武蔵丘、武蔵村山、紅葉川 |
サッカー(女子) | 5校 | 飛鳥、杉並総合、世田谷総合、晴海総合、東大和 |
バスケットボール(男子) | 32校 | 足立、荒川工科、大崎、小岩、小平西、小平南、鷺宮、芝商業、石神井、上水、城東、杉並工科、墨田工科、総合工科、高島、つばさ総合、豊島、豊多摩、練馬、東大和、東大和南、光丘、日野、広尾、淵江、福生、文京、本所、美原、武蔵村山、目黒、若葉総合 |
バスケットボール(女子) | 28校 | 飛鳥、板橋、江戸川、青梅総合、葛飾総合、久留米西、小岩、鷺宮、芝商業、石神井、上水、城東、杉並総合、高島、つばさ総合、豊島、練馬、東大和、東大和南、日野、広尾、富士森、府中東、文京、保谷、本所、向丘、目黒 |
バレーボール(男子) | 5校 | 足立新田、上野、小川、東大和、深沢 |
バレーボール(女子) | 25校 | 足立西、足立新田、江戸川、青梅総合、小川、葛飾総合、石神井、城東、杉並総合、墨田川、高島、田無、千早、豊多摩、練馬、東大和、日野、府中、府中東、福生、文京、保谷、美原、向丘、武蔵村山 |
バドミントン | 3校 | 小岩、東村山、町田総合 |
ハンドボール | 6校 | 江戸川(男)、小岩、東大和、府中、府中西、本所(男) |
野球(硬式野球) | 56校 | 足立西、足立新田、荒川工科、板橋、江戸川、大崎、大森、大山、小川、片倉、葛飾野、清瀬、久留米西、小岩、小平西、小平南、狛江、鷺宮、桜町、篠崎、上水、城東、杉並、杉並工科、墨田工科、総合工科、第四商業、高島、田無、田無工科、多摩工科、千歳丘、練馬、拝島、八王子北、羽村、東村山西、東大和、東大和南、光丘、日野、広尾、富士森、淵江、府中工科、府中西、府中東、福生、文京、保谷、松が谷、武蔵丘、武蔵村山、目黒、紅葉川、雪谷 |
野球(軟式野球) | 1校 | 八潮 |
ラグビー | 6校 | 荒川工科、板橋有徳、小平西、石神井、墨田工科、府中西 |
ソフトボール | 4校 | 青梅総合、江戸川、小平西、保谷 |
テニス(硬式テニス) | 2校 | 田無(男)、東大和(女) |
テニス(ソフトテニス) | 2校 | 高島、清瀬 |
卓球 | 2校 | 多摩工科、府中工科 |
チアリーディング | 1校 | 雪谷 |
陸上競技 | 19校 | 足立、足立新田、板橋、青梅総合、片倉、篠崎、上水、城東、高島、田無、つばさ総合、東大和、府中東、福生、文京、松が谷、美原、紅葉川、若葉総合 |
水泳競技 | 2校 | 杉並、東大和南 |
自転車競技 | 1校 | 八王子桑子 |
ローイング | 1校 | 本所 |
文化分野での特別推薦対象分野と実施校
分野 | 実施校数 | 実施校 |
---|---|---|
英語 | 2校 | 飛鳥、千早 |
ビジネス | 1校 | 千早 |
理科研究 | 1校 | 多摩科学技術 |
ものづくり | 2校 | 杉並工科、墨田工科 |
美術・工芸・デザイン | 5校 | 大泉桜、世田谷総合、つばさ総合、晴海総合、福生 |
書道 | 1校 | 板橋有徳 |
合唱 | 1校 | 八潮 |
吹奏楽 | 8校 | 足立西、片倉、小平西、杉並、杉並総合、八王子北、晴海総合、富士森 |
和太鼓 | 2校 | 篠崎、八潮 |
文化・スポーツ等特別推薦の倍率
一般推薦と併願できること(ただし一般推薦の検査も受検すること)や、実技による試験があることから、文化・スポーツ等特別推薦は倍率が高くなります。令和6年度の文化・スポーツ等特別推薦の倍率(合格者数/受験者数)は、スポーツ分野2.40倍、文化分野2.04倍となっていました。
文化・スポーツ等特別推薦における分野別の高倍率TOP10(合格者数/応募者数)
- ソフトテニス:4.00倍
- サッカー(男子):3.69倍
- 自転車・水泳・ローイング:3.00倍
- バドミントン:2.92倍
- プログラミング:2.67倍
- 硬式野球:2.53倍
- 美術工芸デザイン:2.38倍
- バスケットボール:2.36倍
- 陸上競技:2.31倍
- 英語:2.30倍
都立高校×文化・スポーツ分野での高倍率TOP10
- 9.00倍:城東×硬式野球(合格3名/応募27名)
- 8.00倍:松が谷×陸上(合格2名/応募16名)
- 6.60倍:東久留米総合×サッカー(合格5名/応募33名)
- 6.50倍:江戸川×硬式野球(合格2名/応募13名)
- 6.25倍:府中東×サッカー(合格4名/応募25名)
- 6.00倍:東大和×サッカー(合格2名/応募12名)
- 5.75倍:杉並×硬式野球(合格4名/応募23名)
- 5.67倍:武蔵丘×硬式野球(合格3名/応募17名)、城東×サッカー(合格3名/応募17名)、小平西×バスケットボール(合格3名/応募17名)
- 5.50倍:片倉×サッカー(合格4名/応募22名)、美原×バスケットボール(合格2名/応募11名)
- 5.40倍:南葛飾×サッカー(合格5名/応募27名)
文化・スポーツ等特別推薦の試験について
文化・スポーツ等特別推薦試験日程
入学願書入力期間 | 入学願書受付期間 | 検査実施日 | 合格発表日 |
---|---|---|---|
12月20日(金)~1月16日(木)17時まで | 1月9日(木)~1月16日(木) | 1月26日(日)・1月27日(月) | 1月31日(金) |
文化・スポーツ等特別推薦の出願に必要な書類
- ア 文化・スポーツ等特別推薦書(様式2)
- イ 入学願書(様式3)
- ウ 調査書(様式10)
- エ 自己PRカード(様式12)
- オ 入学考査料 全日制2,200円 (出願サイト上での決済又は所定の納付書)
一般推薦とは異なる様式の提出書類があったり、中学校の公印が必要な書類があったりします。思い込みで進めずに、担任の先生や顧問の先生に確認しながら進めてください。
また、コロナ禍前には、該当の種目における「実績等を証明する書類等の写し」が必要でしたが、コロナ禍において、各高校は「実績等を証明する書類等の写し」の提出がなくても、面接や実技検査により、期待する生徒を選抜することができたとのことから、令和7年度入学者選抜でも「実績等を証明する書類等の写し」の提出を求めない対応を継続するようです。
<参考>令和7年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について
(1) 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を踏まえた主な対応 ※詳細はこちら
文化・スポーツ等特別推薦の推薦条件
推薦を受けるためには、以下のような条件が求められます。
- 中学校での活動や大会での実績が優秀であること(各高校によって基準が異なります)。
- 都立高校の希望する分野で将来も活動し続ける意欲があること。
- 高校入学後、指定された部活動や団体に所属すること。
基本的には、推薦を受けたい種目にて、中学校での部活動やクラブチームに所属していたことが前提になっています。そのうえで、実技試験の前に、”学校から推薦できる基準”というものが存在します。おおよそ各高校の競技レベルに準じた基準になっています。
例えば、サッカーを参考にしてみると、それぞれの高校が所属しているリーグやインターハイ・選手権での成績、今後の目標によって求めるレベル(=推薦基準)が異なっています。
高校名 | 所属リーグ | インターハイ/サッカー選手権(最近で最も良い成績) | サッカー部の目標(3年間) | 中学校からの推薦基準(サッカーの実績にかかわる項目) |
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東久留米総合高校 | T2リーグ | 令和元年度_高校サッカー選手権東京都予選Bブロック優勝:全国大会出場 | 全国大会1回戦突破 | サッカーの能力に優れ、東京都大会上位レベルの実力のある者 |
石神井高校 | T3リーグ | 令和4年度_高校サッカー選手権東京都予選Bブロックベスト16 | インターハイ・選手権東京都ベスト8 / 関東大会東京都ベスト8 | サッカーの技術・運動能力に優れ、中学時代の所属するチームでレギュラーとして活躍し、都大会出場又はそれと同等の能力のある者など、チームで活躍した者 |
東大和南高校 | T4リーグ | 令和5年度_高校サッカー選手権東京都予選Bブロックベスト16 | 高校サッカー選手権大会東京都優勝 / T3リーグ昇格 | サッカーの技術・能力に優れ、中学校でサッカー部又はクラブチームに所属して活躍した者 |
府中東高校 | T5(地域トップ)リーグ | 令和3年度_高校サッカー選手権東京都予選Aブロックベスト16 | 東京都ベスト8 / 高体連7地区選抜チームへの選出 / 各ユースリーグ優勝 / T3リーグ昇格 | 所属する部活動顧問、クラブチーム監督がサッカーだけではなく人物として推薦できる者 |
豊島高校 | 地域リーグ1部 | 令和6年度_インターハイ東京都予選ベスト32 | 高校サッカー選手権大会東京都ベスト8 | 中学校サッカー部又はサッカークラブに所属している者 |
文化・スポーツ等特別推薦の選考方法
- 調査書:推薦書や活動実績を基に選考。
- 面接:個人面接もしくは集団面接にて選考。これまで取り組んできたこと、志望動機、今後の活動への意欲などが確認されます。
- 作文・小論文:作文が選考科目に入っている高校もあります(令和7年度入試では、高島高校、飛鳥高校にて作文選考を実施)。
- 実技試験:スポーツや文化芸術の場合、実技試験が課されることがほとんどです。
各高校によって、調査書/面接/作文・小論文/実技試験の配点はバラバラです。調査書の配点が5~6割、面接1~2割、実技3~4割の配点が多いですが、中には面接や実技の配点が最も高いケースなどもありますので、詳細をしっかり確認し対策を練りましょう。
実技試験は各競技や分野における実技が行われることになります。基礎体力を確認するようなものや、技術を見る内容、ゲーム形式で確認など種目や分野によって内容は異なります。また屋外スポーツの場合は、実技検査当日の天候によって実技内容が変更になることもあります。内容もすべて公開されていますので持参物等含めてしっかり確認しておきましょう。
文化・スポーツ等特別推薦で入学した場合の魅力・注意点
文化・スポーツ等特別推薦制度は、特定の分野で優れた才能を持つ生徒に対して、その能力を活かして高校に入学する特別な機会を提供する制度です。この制度を利用することで、生徒は一般入試とは別の枠で合格を目指すことができ、自身の得意分野をさらに伸ばす環境を得ることができます。
この制度の大きな魅力は、中学時代までに培ってきた学業以外の能力が評価される点です。スポーツや文化活動に力を入れてきた生徒にとっては、その努力が報われるチャンスとなります。また、一般推薦や学力検査と併用できるため、複数の受験機会を持つこともできます。
しかし、この制度にはいくつかの注意点もあります。まず、推薦があったからといって必ずしも合格が保証されるわけではありません。また、入学後も推薦された分野での活動を継続することが求められ、それを怠ると入学資格が取り消されるリスクもあります。
推薦で入学した生徒には、推薦された活動に積極的に参加し、一定の成果を挙げることが期待されます。部活動や外部の大会などに参加し、高校の名誉を担う重要な役割を果たすことになります。
この制度を検討する際は、自身の能力と意欲を十分に見極め、将来の目標と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。高校生活でもスポーツや文化活動に力を入れていきたい、そしてそれを将来の進路に活かしたいと考える生徒にとっては、挑戦する価値のある選択肢と言えるでしょう。
文化・スポーツ等特別推薦制度は、才能ある生徒に特別な機会を提供する一方で、それに見合った責任も伴います。この制度を通じて入学を目指す生徒は、自分の特技を活かしながら、学業との両立を図り、充実した高校生活を送ることが期待されます。慎重に検討した上で、自分の将来にとって最適な選択をすることが、この制度を活用する上で最も重要なポイントです。
※各情報は2024年東京都教育委員会公式情報をもとにまとめていますが、情報が更新されることもありますので、詳細は東京都教育委員会公式サイト、またそれぞれの高校の公式サイトを必ずご確認ください。
<参照元はこちら> 令和7年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について